それでもやっぱり議員数は削減すべきか? 「国会議員222人削減」の是非

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ほかの国と比較すると、議員数は多くない?

大学で海外諸国の議会制度を学んでいる学生から、海外の議会と比べると、日本の議員数は決して多くない、という意見をもらった。これはよくある議論なので、整理しておこう。

まず、イギリスとの比較。イギリスは、貴族院と庶民院の二院制ではあるが、貴族院には権限がなく、実質は庶民院による一院制とみなすことができる。庶民院と比較すると、日本の議員数は、確かに多いとは言えない。

日本は、「人数が多い」というより、衆議院と参議院の役割分担が不明確で「無駄が多い」のだろう。

次にアメリカ合衆国を見てみよう。アメリカでは慣例上、上院が外交、下院が内政、と役割分担しているので、二院制だが2つの院でひとつの院を構成しているととらえることができる。アメリカは連邦制をとっており、各州に大きな権限が与えられた地方分権の国。下院は人数比率に応じて議員数が割り振られているから、もし外交のことを下院で決めてしまうと、州同士は対等な関係であるはずなのに、人口の多い州に有利な条約ばかり結ばれてしまう危険性がある。だから、上院は50の州ごとに2人ずつ議員を出して、対等な人数比で話し合いをしている。

したがって、アメリカの連邦議会と比較して、議員数を議論するのは難しいが、二院制のあり方については、ひとつの参考にはなるだろう。日本の参議院は衆議院と役割が重複しており、「無駄」な印象はぬぐえない。

国会議員の仕事は真面目にやったら結構大変?

さて、話を議員の数に戻すが、この図を見てほしい。昨年12月に当選した衆議院議員の3分の1以上は新人である。選挙のたびに大量の新人議員がコロコロ変わる状況では、『頭数だけの議員なんか、誰でもできそう。無駄だな』という印象につながっても仕方がない。国会議員は議論のプロであるべきで、議決のときに党の意向に賛成するだけの人は不要である。

与党である自民党・公明党のベテラン衆議院議員は、合わせても196人しかいない。しかし、国家が抱える問題は多岐にわたっている。防衛、外交、財政、税金、年金、医療、労働、教育、憲法改正、経済活性化、金融改革、東北の復興、農業……。真面目にやると、この人数で仕事をこなすのは結構大変なのが実情だ。国会議員は722人で議論しているわけではなく、2つの院・政党・委員会に分かれて日々の活動を実施しているから、本当に議員数を削減して仕事がまわるのか?という検証は必要だ。

衆議院議員の会派別人数比
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