GPIFが抱える「5.3兆円損失」以上の問題点 運用資産をめぐる「不透明なお金の流れ」
それはいったん置くとして、実は平成27年度のGPIFの運用において筆者の目を引いたのは、資金流出入状況である。
GPIFは「年金特別会計」から「寄託金の受入れ」(流入)、運用収益等を「納付/寄託金償還」(支出)として納付している。この「年金特別会計」からの「寄託金受入れ」は、2008年度までは1兆円を上回っていたが、少子高齢化を受け2009年度から4000~6000億円程度に減ってきている。
こうしたなか、平成27年度の「寄託金の受入れ」は突然約2兆9000億円に増やされている。そして同時にこれまで1.3~6.7兆円あった「納付/寄託金償還」は僅か2750億円に減らされている。
GPIFの運用資産はアベノミクス開始時とほぼ同じ?
この結果、2009年度以降ネットで資金流出(「寄託金の受入れ」<「納付/寄託金償還」)となっていたGPIFは、27年度に2兆6000億円ほどの資金流入主体に転じている。
5兆3000億円もの運用損失を出した結果「年金特別会計」に対する「納付金」が減ってしまうことは理解できることである。しかし、少子高齢化が進む中で、「保険料のうち年金給付に充てられなかったものを年金積立金として運用」しているGPIFに対する「年金特別会計」からの「寄託金の受入れ」が大幅に増えるというのは、考え難いことだ。
こうした「操作」によって、GPIFの平成27年度末の運用資産は5兆3000億円もの運用損失を出したにも関わらず、平成26年度末比2兆7294億円しか減少していない。ここ数年のように「年金特別会計」からの「寄託金の受入れ」が5000億円程度、「納付」が4~6兆円であればGPIFの運用資産額は前年度末から10兆円近く減少し、130兆円を割り込んだ可能性も否定できない。
アベノミクス初年度の2013年度末のGPIFの運用資産総額は126兆5771億円であることを考えると、政府側にこれに近い水準に落ち込むことは避けたいという事情があったのではないかと思ってしまう。
参考までに、今回公表された平成27年度末のポートフォリオをベースに、英国のEU離脱ショック後の6月末のGPIFの運用資産を推計してみると、円高・株安によって約5兆円程度減り130兆円を割り込んでいる可能性がある。
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