GPIFが抱える「5.3兆円損失」以上の問題点 運用資産をめぐる「不透明なお金の流れ」
遅ればせながら7月29日にGPIF(年金積立金管理運用行政法人)が公的年金の平成27年度の運用実績を発表した。すでに7月1日までにGPIFが厚生労働省に提出した財務諸表で5兆円を上回る運用損失を計上することは明らかになっており、今回発表された「5兆3098億円の赤字」という運用実績自体は想定の範囲内といえる。
「たった1ページの銘柄表」に1カ月も必要?
これまで7月上旬に公表されて来た前年度の運用実績の公表が月末にずれ込んだことに関して、厚労省は「初めて保有銘柄を発表するため、時間がかかる」と説明して来た。確かに今回発表された「平成27年度業務概況書」は129ページと、前年度の78ページから50ページ以上増えている。
しかし、厚労省が運用実績の公表を遅らせる理由として挙げていた保有銘柄に関する記載は、117ページの「保有全銘柄について」という僅か1ページに、「国内債」「国内株式」「外国債券」「外国株式」のそれぞれの上位10銘柄の表を貼りつけただけに留まっている。残りの銘柄については「11位以下は管理運用法人のホームページをご覧ください」で片付けられており、この1ページを付け加えるのに約1カ月の時間が必要だったという説明は非常に苦しいものだ。
GPIFは今回初めて、保有全銘柄の公表を行った。例えばGPIFが間接的に保有している「国内株式」は2037銘柄と、東証1部上場銘柄数(1971銘柄)を上回っている。GPIFの「国内株式」運用額30兆5809億円のうちの81.5%、24兆9284億円がパッシブ運用(市場平均と同程度の運用を目的とする運用手法)であることを考えると、GPIFが保有するポートフォリオがベンチマーク(BM)である「東証株価指数(配当込み)」に則したものになっていることは十分に想像される。
BMに則した銘柄を保有していることが初めから明らかな中で、重要性の乏しい「保有銘柄を発表するために」1カ月も時間を掛ける必要があったのだろうか。
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