「原爆投下」を阻止できる可能性はあったのか 太平洋戦争「最大のイフ」を検証する
Q4. 「原爆を運んだ船が、帰り道に撃沈された」のは本当ですか?
本当です。原爆を投下したアメリカの爆撃機「B-29」が、サイパン島に隣接するテニアン島の基地から飛び立ったのは有名です。当時、テニアン島は世界最大の空軍基地でした。
その原爆をアメリカ本土からテニアン島まで運んだのが、米重巡洋艦「インディアナポリス」(排水量9800トン、主砲8インチ9門)でした。同艦はテニアン島への輸送後、その「帰途」に日本の潜水艦により「撃沈」されました。
もし、インディアナポリスの撃沈が、テニアン到着後ではなく「到着前」であれば、「8月6日と9日の広島、長崎への原爆投下は不可能だった」といわれています。
日本船は「重要艦船」と知らずに撃沈した?
Q5. インディアナポリスが撃沈されたのはいつですか?
インディアナポリスは、テニアン島への原爆輸送を7月26日に終えると、グアムに移動し、その後レイテ島の基地へ向かうため、7月28日に単独で出港します。
そして7月30日、グアムとレイテを結ぶシーレーン上で作戦行動していた日本の潜水艦に発見され、0時15分、3本の魚雷を右舷に受けて「撃沈」されました。乗員1199名のうち、生存者は316名でした。
Q6. 日本海軍の「どの潜水艦」が撃沈したのですか?
「伊号第五十八潜水艦(伊58)」(水上排水量1635トン)です。「伊58」は、このとき「人間魚雷」で知られる「回天(かいてん)」も6基搭載していた大型潜水艦です。
このときはアメリカの主要輸送ルートだった沖縄、グアム、レイテ(フィリピン)を結ぶ海域を通商破壊作戦行動中でした。インディアナポリスの撃沈に使用した武器は「回天」ではなく、通常の「魚雷」です。
Q7.日本はこの船の「正体」を知っていたのですか?
いいえ、知らずに撃沈しています。
艦長の橋本少佐は攻撃時、この船を重巡洋艦の主砲シルエットから敵の大型戦艦と「誤認」しており、その「正体」をまったく知りませんでした。事実、艦長から司令部への報告では、「アイダホ型戦艦に魚雷3本」と打っています。
数日後、味方からの情報により、沈めた船が敵の「重要艦船」だったらしいことを知るのですが、このときはまだ原爆投下前でもあり、伊58の乗員はおろか、日本人のほとんどが「原爆」など想像すらしていませんでした。
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