自工会会長、賃上げに消極姿勢 トヨタ自身も労組の要求に「困難」

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アベノミクスによる消費拡大を目指して、安倍晋三首相が財界首脳に対して行った異例の「賃上げ要請」。にもかかわらず、日本の基幹産業である自動車業界がこれに応えるのは難しそうだ。

2月15日、定例の記者会見に臨んだ日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は、賃金の引き上げや、国内生産の拡大について、消極的な物言いに終始した。

ボーナスを含めた賃上げには否定的

デフレ脱却のカギを握る賃金の引き上げについて、春闘では「労使が認識を共有して、長期安定的な雇用関係を維持するために建設的な議論を行いたい。そのうえで各社の状況に応じて決まる」と何度も繰り返し強調。ボーナスを含めた賃上げには否定的な態度を貫いた。

ちなみにトヨタ自動車自身は、13日に提出された労働組合の要求(賃金:ベースアップなし・定期昇給のみ、ボーナス:年間5カ月+30万円〈前年は年間5カ月+3万円で妥結〉)に対し、賃金要求には「慎重な上にも慎重な判断が必要」、ボーナスに関しては「要求受け入れは到底、困難」としている。

自工会の会見の場で豊田会長は、円安を受けた国内生産の拡大についても、「超々円高局面が是正されただけ。あまりに長く続いた円高で自動車産業は相当傷付いた」と説明。現在の円安が、国内生産縮小、海外生産拡大の流れを止めることはならないという見通しを示した。

“日本経済を支える”と自負する自動車業界だが、賃金引き上げや国内生産の増加を通じて、景気回復を牽引する役割はとうてい期待できそうにない。

 

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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