黒田バズーカは、また「空砲」に終わる可能性 日銀は本当に「3連敗」を避けられるのか

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「異次元の金融緩和」を推し進めてから3年半。「異次元の金融緩和」が「2%の物価安定目標」をもたらさないことは明白になっている。ここに来て市場で「ヘリコプターマネー」が取り沙汰されるようになったのも、これまでの延長線上にある政策では物価目標を達成できないことを市場が認識してきたことの証左でもある。

実体経済に対する効果がほとんどないことが露呈する中で追加緩和に踏み切る以上、短期的な円安・株高を演出できなければ、市場の期待を繋ぎ止めることは難しくなる。

これまで黒田日銀は、市場の意表を突く「黒田バズーカ」を撃つことで権威を保ってきた。しかし、その「黒田バズーカ」も、昨年末の「補完措置」、今年1月の「マイナス金利付き量的・質的緩和」と2回続けて空砲となっている。

黒田日銀は権威を保つために3連敗は避けなければならない状況にあるが、今回、金融市場は日銀が追加緩和に動くことを相当織り込んでしまっている。

緩和実施でも見送りでも、市場から疑問符がつく懸念

しかも、市場の期待は一時的とはいえ、これまでの政策の延長線上にある金融緩和策にとどまらず、「ヘリコプターマネー」といった「異次元の政策」にまで膨れ上がってしまった。

こうした状況の中で黒田日銀がこれまでの政策の延長線上にある追加緩和に踏み切った場合、市場に「too little」という失望感を与えてしまうリスクは高い。

さらに、市場の期待が「ヘリコプターマネー」まで昇華したなかで、これまでの政策の延長線上にある追加緩和策しか打ち出せないようなら、「まだまだ金融緩和の手段はある」と繰り返してきた黒田総裁の発言の信憑性に疑義を生じさせることになる。

追加緩和を見送っても、追加緩和を実施しても、黒田総裁のこれまでの発言には市場から疑問符を付けられる状況にある。「黒田バズーカ」が、いわば"自爆テロ"のような結果になる日はそう遠くないと考えておいた方が賢明だ。

近藤 駿介 金融・経済評論家/コラムニスト

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こんどう しゅんすけ / Shunsuke Kondo

1957年東京生まれ、早稲田大学理工学部土木工学科卒業後、総合建設会社勤務を経て、31歳で野村投信(現野村アセットマネジメント)に入社。株式、債券、先物・オプション取引等を担当した後、野村総合研究所に出向しストラテジストとして活躍。再び、野村アセットに戻ってからは、担当ファンドが東洋経済の年間運用成績第2位に選出されるなどファンドマネージャーとして活躍。その他、運用責任者として、日本初の上場投資信託(ETF)である「日経300上場投信」の設定・上場を成功させ、1996年に野村アセット初のプロフェッショナル・ファンドマネージャーとなる。現在は金融や資産運用に関する客観的な知識を広めるべく、合同会社アナザーステージを立ち上げ、会長兼CEOとして、一般向けの金融セミナーや投資セミナーなど専門家向けセミナー等も開催中。自身が手掛けるメルマガ『マーケット・オピニオン』は、個人投資家から圧倒的な支持を得る。

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