「86」と「CR-Z」は、なぜ明暗が分かれたのか

トヨタとホンダ、「復刻」スポーツの通信簿

86/BRZ、CR-Zはどちらにもご先祖さまがいる。異なるのはその生い立ちのコンセプトだ。86/BRZは「AE86の21世紀版を作るのではなく、AE86のように長く人々に愛されるスポーツカー」に対し、CR-Zは「ハイブリッドシステムを用いた21世紀のCR-X」だった。つまり、スピリットのみ継承し、すべてを刷新した86/BRZに対して、CR-X後継モデルを目指したCR-Zというわけである。

CR-Zはエコ&スポーツ

CR-Zは、「今後はハイブリッドが当たり前の時代になる」と、エコ&スポーツのコンセプトが掲げられていた。つまり、ハイブリッドは燃費がいいのは当たり前、いかにドライビングの楽しさを追求できるか、であった。

コストの面からハイブリッドシステムやボディなどの基本コンポーネントは2代目インサイトを譲り受けたが、スポーツカーは「車体剛性」と「軽さ」が大事と言うことで、骨格はほぼ新設計。サスペンションはフロント・ストラット/リア・トーションビーム式ながらも、剛性アップと軽量化のためにフロントのロアアームはアルミ鍛造製、タイヤはエコタイヤではなくスポーツにふさわしい銘柄が採用された。

エンジンはスポーティハッチの「フィットRS」用の1.5L+ハイブリッドシステム(IMA)の組み合わせで、トランスミッションは6速MTを採用。「ドライビングの楽しさには必要不可決」と言うことで、役員を説得して設定したというエピソードもある。

ただ、後継モデルにはご先祖さまと比べられてしまう運命があり、ハードルも上がる。CR-ZはCR-Xの「ハンドリングの良さ」、「軽快な身のこなし」を再現できた部分があったが、エンジンとモーターを併用するパワートレインはスポーツカー好きには物足りなさが残ったはずだ。特に「VTEC」と呼ばれる、気持ち良く回りつつ、高回転で一段の出力が盛り上がるエンジンが好きなホンダ党にとってはなおさらだと想像する。

CR-Zも進化・熟成を怠ったワケではなかった。むしろ、商品内容は年々、充実させてきた。2012年のマイナーチェンジでパワートレインを刷新し、高回転型i-VTECのエンジンとリチウムイオンバッテリーの組み合わせに変更。F1のKERSの発想を具体化させた、「プラススポーツボタン(瞬間的にモーターのフルアシストとスロットル開度全開となる)」も採用された。

シャシー側もボディのスポット溶接アップ、サスペンションのリセッティング、17インチタイヤの採用など多岐に渡る変更が実施されている。ワークスチューナーである無限がスーパーチャージャーをプラスしたコンプリートカー「CR-Z MUGEN RZ」を300台限定で発売も行なっている。

2015年には、リアトレッドの10mm拡大とともにサスペンションをリセッティングし、ブレーキ性能も向上。衝突被害軽減ブレーキ(シティブレーキアシスト)も設定した。エンジン音を車内のスピーカーに出力する「アクティブサウンドコントロール」、車内のノイズに対して逆位相の音をスピーカーから出力してノイズを打ち消す「アクティブノイズコントロール」など、新たな発想も積極的に取り込みつつ、専用ボディカラー&インテリアの特別仕様車も設定した。

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