「スバル」はなぜ富士重工の名を捨てるのか 吉永社長が語る「目指すものの深さ」とは

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――過去のインタビューで、1ドル=100円の水準が適切だと言っていた。英国のEU離脱や、米大統領選など、一気に円高が進む可能性もある。

1ドル=103円とか105円なら騒ぐレベルではない。同120円など、円安になると自分たちの実力を見誤ってしまう。前期までの業績なんてまさにそうだ。

ただ、何かのきっかけで一気に100円を超えた円高になるのは問題がある。今、日本の自動車産業に1ドル=80円の円高に耐えられるだけの実力はない。日本の強みは、サプライヤーを含めた産業の集積にある。円高になると自動車メーカーが海外のサプライヤーにシフトすることで、国内のサプライヤー網が衰退し、産業構造が壊れてしまう恐れがある。

「スバルブランドを磨こう」というメッセージ

――5月12日には社名変更と同時に、電気自動車(EV)を2021年に投入すると発表した。4輪駆動など、”走り”を追求してきたスバルが、EVを投入する意味をどう考えたらよいか?

中島飛行機の創設から100周年にあたる2017年4月、「SUBARU」へと社名を変更する(撮影:風間仁一郎)

スバルらしさを維持したままEVを入れるのは難しい。従来はポルシェとスバルしかやっていない水平対向エンジンで個性を発揮できた。EVではこういった技術で個性を出せない。だから、ここ数年は安心安全のイメージを打ち出してきた。「走りの楽しい」スバルのEVが難しくても、「安全」なスバルのEVはありえる。

今後、中国・北京など環境規制が一段と厳しくなる地域では、EVやPHVのラインナップがないと、スバルそのものが買えないということが起きる。まったく新しいEVを出すのではなく、スバルらしさがあるクルマにPHVやEV、HVといった選択肢を増やしていく。たとえば、XVにEVモデルを追加するといった具合だ。

――社内にはEVの開発リソースは十分にあるのか?

新卒や中途採用を増やすと同時に、組織改正で自動車事業の開発リソースを増強する。建設機械や農機具などに用いる汎用エンジンを製造している産業機器カンパニーを、今年10月に自動車部門に統合する。産業機器に所属している400人中、技術陣は70人いる。この全員に自動車の開発部門に異動してもらう。

産業機器部門の社員からは「いつかはこういう日が来るとは思っていたけれど、寂しいです」という声はあった。ただ、これによって自動車の電動化という流れにもついていける。昔はゴミ収集車や風力発電も手掛けていたが、今回の統合でいよいよ自動車と航空宇宙に絞られた。

社内のリソースを自動車と航空宇宙に集約し、ブランを磨くための組織体制を整える。今回の社名の変更には、「スバルブランドを磨くことに力を結集させよう」という社内向けのメッセージも込められている。

(週刊東洋経済7月16日号「この人に聞く」に加筆)

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