韓国大揺れ、「サムスン李会長に買春疑惑!」 組織ぐるみの関与も、大手メディアは及び腰

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なぜこんな動画が撮影されたのか。撮影したのは、李会長に呼ばれた女性のうちの1人。だが複数ある資料から判断すると、首謀者はこの女性ではなく、実は2人の男性の名前が浮かび上がる。動画をゆすりの種にして、サムスン側からカネを受け取ろうとしたようで、実際、サムスン側にカネを要求する内容が記された電子メールのキャプチャー画像も資料の中にあったという。

これに対しサムスン側は、「動画があるとしてカネを要求する電話を受けたことはあるが、信じがたい話でもあるため、何も応えなかった。警察にも届けず、実際に映像があるのかどうかの確認もしなかった」と回答している。

1日だけでページビュー(PV)数が500万

韓国を代表し、また厳然とした力を持つ李会長の醜聞でもあり、韓国社会にとってはかなりの衝撃を与えている。実際に、「ニュース打破」でこの報道がなされた後、1日だけでページビュー(PV)数が500万を超えている。人口約5000万人の韓国にとってこのPVは、考えられないほどの好記録だ。

関心は高い一方で、サムスンのような財閥企業については普段から国民からの厳しい見方があり、「カネも権力もある財閥オーナーならば、この程度のことはしているだろう。李会長だけの話ではない」といった冷めた意識が支配的だ。李会長はこれまで、脱税や背任などで有罪判決を受けたことがある。

露骨にネガティブな反応を見せたのは、大手マスコミだ。朝鮮日報や中央日報、KBSやMBCなどの大手新聞・テレビは反応がにぶかった。「ニュース打破」が報道したのは7月21日だったが22日にこのスキャンダルを掲載したところ大手新聞は一紙もなく、扱いも非常に小さかった。

自社のウェブサイトでも掲載した大手メディアはほとんどなかった。22日夕刻以降の報道番組でも、トップで報じることはなく10番目以降の重要度の低いニュースとして報じるところが多かった。

韓国の全国言論労働組合の調査を見ると、22日午前時点でこのニュースを扱ったのは、全国紙の「ハンギョレ」「京郷新聞」以外に掲載したところはなく、テレビ局もまったくなかったことが確認できる。

ソウル在住の外国人ジャーナリストらは「今年6月に男性芸能人による性暴行事件が起きたとき、これらメディアは大小、数多くの報道を行った。それと比べると、あまりにも露骨すぎる反応だ」と苦笑するほどだ。

「ニュース打破」は独立系メディアで、主にウェブ上での報道に特化したメディアで、視聴者による寄付金などで運営されており、企業広告などからの収入は得ていない。韓国ではこの数年、こういった独立系メディアや協同組合式の運営によるメディアが勃興、今回のような大手メディアが報道できないスクープをものにすることが少なくはない。

国民の視線が厳しいにもかかわらず、己を律しきれない財閥。さらにカネを持つ彼らに収入面で多くを依存せざるを得ず、つねに彼らの目を気にしながら、時には目も耳も口もつぐむ韓国大手メディア。今回の醜聞をきっかけに、まさしく韓国の構造的な醜さが根深いものであることを確認させられる報道になってしまった。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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