ヘリコプターマネーは、どうして危ないのか 金融政策は物価をコントロールできなくなる

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バーナンキ氏はブログの中で、ヘリマネ政策を実行するにあたって二つの問題があると論じている。一つは技術的な問題だが、より深刻なのは二つ目に挙げているガバナンスに関する問題だ。民主主義社会において、ヘリマネ政策のように、財政政策に類する極端な政策を誰がどうやって決定するかを問いかけている。これは中央銀行の独立性や金融政策と財政政策の関係に関する重大な問題提起をはらんでいる。

中央銀行(日銀)に独立性が認められているのは、戦時中から戦後にかけての経験があるからだ。第一次世界大戦後のドイツでハイパーインフレーションが起きたのは、中央銀行が政府の債務を負担し、通貨を大量に発行したことが原因だ。また、一般に政府にはインフレを起こすことで課税と同様の効果(インフレタックス)を生じさせようという誘惑が働くので、中央銀行に独立性を与えることでそれを防ぐ狙いもある。日本のように公的債務の残高がGDP比200%超と先進国で突出して大きく、しかも財政赤字縮小の道筋が定かでない国にとって、金融政策は財政政策との関連でとらえる視点がとりわけ重要だ。

日本はフィスカルドミナンスに陥った

しかし、アベノミクス以降の日銀と政府の関係をみていると、こうした懸念が現実のものになりかねない危うさがある。

白川方明・前日銀総裁はその著書の中で、金融政策と財政政策の関係について、2つのケースに分けて説明している。一つは独立性を保障された中央銀行が物価安定を目的として金融政策を運営する一方、財政当局は健全な財政運営を行うケース。もう一つは中央銀行に独立性がなく、政府も健全財政にコミットしないケースだ。

前者では先に触れたように、今日の減税は明日の増税予想を生み、財政政策は景気に中立的になるため、中央銀行は金融政策によって物価をコントロールできる。

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