「アップル神話」崩壊? 株価下落止まらぬワケ 株価はピークから35%下落

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改善が進まない地図

一方で、スマートフォンやタブレットの強敵であるサムスン電子は12年10~12月に前年同期比89%増の営業利益を記録するなど、絶好調だ。

サムスンは、スマホでは世界シェアトップの座を固め、アップルとの差を広げている。サムスンの強みはフラッグシップである「ギャラクシーS3」に加え、5・5インチの大画面ノートタイプ、キーボード付きスライド型、機能を絞った廉価モデルなど、さまざまなバリエーションがあることだ。

特に欧州では圧倒的な高シェアを達成し、現在はアップルのおひざ元である米国市場を攻めている。このサムスンに対抗するための商品ラインナップを示せるかどうかが、これ以上の沈没を防ぐためのカギとなる。

クックCEOが掲げる「顧客に愛される、すばらしい商品を作る」という方針を徹底できるかどうかも、重要なポイントだ。昨年9月、アップルはiOS6のリリースと同時に、標準地図として採用していたグーグルの地図と決別し、自社開発の地図へ切り替えた。これが非常に劣悪で、クックCEOはユーザーへ謝罪。改善が進むまでは他の地図アプリを推奨する異例の事態になったことは記憶に新しい。

しかし、自社開発地図の改善は一向に進んでいない。1月29日にはiOSをバージョンアップしたが、相変わらず伊勢湾はフィリピン海と表示され、日本各地にハングルの地名表示が散見される。グーグルの地図アプリを使いたいと思っても、メールや予定表などのアプリケーションとリンクする地図はアップル製に限られる。なぜ不便な状態を放置しているのか。「顧客に愛される商品」の基準が大甘になっているとしか思えない。

クックCEOの最近のコメントをトレースすると、リビングルームのテレビ関連の新事業を準備しているようだ。そこでアイフォーン、アイパッドのような圧倒的な魅力を示せなければ、いよいよ厳しくなるだろう。

(撮影:Getty Images =週刊東洋経済2013年2月9日号)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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