なぜエチオピアのアスリートは足が速いのか

リオ五輪出場が決まった有望選手に取材!

ディババ姉妹で知られるゲンゼベ・ディババ。リオ五輪女子1500メートルに出場する ©Kiyori Ueno

“ディババ姉妹”の末妹で、昨年、陸上1500メートル世界記録を22年ぶりに塗り替えたことで知られるゲンゼベ・ディババのアシスタント・コーチのニグス・デムリエも「ゲンゼベの才能は非常に高い持久力だ。これは、ディババの家系の遺伝と高地で育ったことで生まれた。いくら走っても疲れない」と話す。ディババはリオ五輪で1500メートルへの出場が決まっている。

米国ジャーナリストのデービッド・エプスタインはニューヨーク・タイムズのベストセラーにもなった本『Sports Gene(日本語版:スポーツ遺伝子は勝者を決めるか? : アスリートの科学)』(2013年)の中で英グラスゴー大学の生物学者の研究を挙げながら、エチオピアやケニアなどの東アフリカが突出して長距離で成功していることを進化論の視点から説いている。何世代にも渡り、暑く、乾燥した気候に適応してきたこと、その気候によりクールダウンしやすく、長く細い手足を持つ人々が作られたこと、1800~2700メートルという最適な標高で訓練するランナーたちは赤血球をより多く作り出すことにより、より効果的に酸素を使えるようになったと説明している。

アベベの伝記『Barefoot Runner(裸足のランナー)』(2007年)を書いた英国の作家ポール・ランバリも、その本の中で、「ベケレの足の裏はコンクリートのように固かった」と書いている。裸足で生活する環境が作り出す体の強靭さである。

最貧国で育つ強靭な精神

エチオピアは今では世界でも高い経済成長率を誇る国である。けれどもその半面、1980年代の大干ばつでは60万~100万人の人々が餓死した歴史を持ち、その後も干ばつは定期的に起きている。昨年はエルニーニョにより30年ぶりといわれる大干ばつがこの国を襲い、餓死者の報告はないものの、国民の10人に1人にあたる1000万人が一気に食糧支援が必要な状況に陥ってしまった。いまだに世界でも最貧国の1つで、人口の80%以上が超小規模農家で、いまだに雨水に頼り、農耕牛やくわや手を使った昔ながらの農業を営み、自分たちが食べていくだけの作物しか作ることができない。多くの家庭では新年などの祝い事以外で肉や卵を口にすることはほとんどなく、多くの人々が慢性の栄養不足に苦しんでいる。

このような村で人々は水をくみにいくだけでも山道を何時間も歩く。「農村での生活は強靭で我慢強いメンタリティを作り上げる。これは中長距離ではとても重要な要素だ」とセンベレのコーチでもあり、エチオピア選抜チームのシニア・ヘッドコーチのフセイン・シボは言う。「裸足で駆け回るというのはエチオピアの農村ではよくあること。車などはなく、子どもたちは毎日学校に走って行き来し、学校から帰れば親の農作業を手伝う」。

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