いまだ燻りつづける、わが国の領土問題

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経済的連携も必要な北方領土交渉

北方領土とは、日本の北東端に位置する歯舞群島(はぼまいぐんとう)、色丹島(しこたんとう)、国後島(くなしりとう)、択捉島(えとろふとう)の4島です。1875年に締結された樺太千島交換条約では、千島列島を日本領、樺太をロシア領としました。この条約は、千島列島として18の島の名前をすべて列挙していますが、北方四島はその中に含まれていません。つまり北方四島は、もともとわが国の領土と認識されていたのです。 

しかし、1945年8月15日、日本はポツダム宣言を受諾し降伏しました。そこでソ連は、8月28日から9月5日にかけて、千島列島、北方四島(択捉島、国後島、歯舞群島、色丹島)を占領したのです。1946年には、これらの島嶼をソ連領に編入する国内法措置をとり、今日まで統治を継続しています。日本は、日露間の数度の国境線変更にもかかわらず、一貫して日本の領土である北方四島-いわゆる北方領土について、返還を求めています。

1956年日ソ共同宣言では、平和条約締結後に歯舞・色丹を日本に引き渡すこととされました。しかしながら、1960年の日米安保条約改定に際し、ソ連は日本領土からの全外国軍隊の撤退を、歯舞・色丹返還の新たな条件としました。米ソ冷戦の影がここにも出てきたのです。冷戦が終結すると、1993年の東京宣言において、歯舞、色丹に加え、国後、択捉の帰属も日ロ間の交渉事項であることが明記されました。その後、プーチン大統領は2001年のイルクーツク声明で、日ソ共同宣言を交渉プロセスの出発点とすることを確認し、2003年の日露行動計画で、残る諸問題の早期解決のため交渉を加速することに合意しました。何とか北方領土問題は解決に向かって、少しですが動き出しているという状況です。

2007年9月には、安倍首相がプーチン大統領と会談しました。その際、北方領土の話は明確には出ませんでしたが、平和条約の締結に向けた交渉継続が必要との認識は示されました。現在、ロシアは高い石油価格に支えられ、その国力は再び大きくなりつつあります。領土問題だけでなく、経済的な連携も含めた交渉が必要といえます。

以上のように、「わが国の領土問題」について、自分の勉強のためにもまとめてみましたが、一つ発見したのは、「外務省内で領土問題は地域別の担当になっており、一元的には見られていない」ということです。領土問題は、外交の最も大きなテーマの一つです。是非とも一元的に考える部署が必要だと思いました。もちろん、領土問題は過去の歴史など事実を積み重ねることも必要ですので、「領土問題を研究する機関」も必要だと思います。独立行政法人北方領土問題対策協会などがありますが、領土問題をバラバラに議論していてはなかなか対応は進まないでしょう。

藤末健三●ふじすえ けんぞう
民主党参議院議員。1964年熊本県生まれ。東京工業大学卒業後、通産省(現・経産省)に入省。マサチューセッツ工科大学大学院、ハーバード大学大学院を修了。99年、東京工業大学で博士号取得。東京大学講師、助教授を経て04年参院選初当選。

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