16年ぶり売り上げ増 百貨店の回復は本物か 懸念材料は多いが…

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実際、各社の業績は堅調に推移している。J.フロント リテイリングや高島屋の12年3~11月期業績は増益だった。最大手の三越伊勢丹ホールディングスの12年4~9月期営業利益は9・8%減だったが、期初に発表した計画を上回っており、通期では4・9%増の250億円を見込む。

13年の全国百貨店売上高についても「既存店ベースでは少なくとも前年並みを維持するのでは」(百貨店関係者)との見方が少なくない。12年に増床や改装した店舗が通期で貢献するうえ、3月には伊勢丹新宿本店の改装オープンが控えている。後半には14年4月の消費増税を前に、駆け込み需要の発生も予想される。
 出足は悪くないようだ。「(1月は)降雪の悪影響を除けば、ほぼ横ばいで推移している。時計などの高額品が従来よりも若い層の30~40歳代で動くようになっている」(高島屋)という。

14年が正念場

今後の注目は14年4月の消費増税後だろう。前回の消費増税時を振り返ると、1996年の既存店売上高は5年ぶりの増加となる1・8%増だったが、増税した97年は1・9%減、98年は5・0%減となり、15年連続で減少した。

三越伊勢丹の大西洋社長は「96年は売上高でプラス1%、97年は3~4%のマイナスの影響があった。今回は(15年の)10%への引き上げ分も含め、トータルで営業利益80億円のマイナス効果があると試算している」と話す。

消費増税だけでなく他業態との競争もなお強まる。日本ショッピングセンター(SC)協会の資料によれば、12年に全国で開業したSCは三十数カ所。13年の予定は73カ所だ。イオングループは店舗面積1万平方メートルのSCを8カ所以上開業する予定であり、イトーヨーカ堂もSC「アリオ」の出店に積極的だ。それらが出そろう14年は全国で顧客の奪い合いがますます激しくなる。大手百貨店は地方に不振店を多数抱えているだけに、先行きは楽観できない。地方を地盤とする百貨店はなおさらだ。

三越伊勢丹が自主企画商品の拡充やセールの後ろ倒しによる採算改善を図っているほか、J.フロントがテナントの積極導入などによる脱百貨店化を推進するなど、各社は改革を進めている。が、その成果が上がらなければ、店舗の整理が加速し、業界再編の呼び水となる可能性がある。

(撮影:尾形 文繁)

石川 正樹 東洋経済 記者

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いしかわ まさき / Masaki Ishikawa

『会社四季報』元編集長。2023年より週刊東洋経済編集部。

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