藤田晋(下)「これからはオタクよりも経営者」 自分で作る力よりも、集団を束ねる力

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――起業やベンチャーの息吹はまたよみがえってきていますか。最近は、ベンチャーではなく、スタートアップと言う人もいますが。

スタートアップというのは、かっこよく名前を言い直しただけですよね。ベンチャーは一時、よみがえりかけたんですけど、さっき言ったように、だんだん開発が大型化しているので、ちゃんと腹をくくれているリーダーでないと難しいですよ。チャラチャラした感じでやると、昔のビットバレーみたいになっちゃいます。なんか雨後の筍みたいにわっと出てくるけれど、どれもなくなってしまうことになりかねません。

最近は、VCの投資案件の数を見ても、ちょっと停滞ぎみかなという印象です。開発が大型化したことによって、新しいプレーヤーが既存の強いプレーヤーに勝つのが、以前より難しくなっています。

――そうすると、自分で企業を大きくするより、会社を既存のメインプレーヤーに買ってもらうことを考えたほうがいいですね。

起業でもいいと思うんですが、どこかで会社を売ることも選択できるようになったほうが、本当はいいですよね。日本社会には、売ったら負けみたいな感じがあるので。

――藤田さんは、自分より下の世代に対して、物足りなさみたいなものを感じていますか。もっと自分を脅かすような人がいっぱい出てきてほしいですか。

本当はもっと出てこれると思うんですけどね。もし出てきても、ビビりはしないですよ(笑)。それによく考えたら、きっと出てきても出てこなくてもどっちでもいいや、っていうのはありますね。

――何で出てこないんでしょうか。

やっぱり日本社会にそういう空気感がないですよね。シリコンバレーにいれば、みんな起業したくなるし、可能性に懸けてみたくなると思うんですけど。

日本は起業したら、もう上場するぐらいしかない。でも、上場しても本当に小粒の会社というのは、それでいいのかという感じになってしまうし、そもそも上場自体が確率の低い話に聞こえてしまう。シリコンバレーみたいに、バイアウトが盛んになって、創業1年の会社が何十億円で売れたといった話が出てくれば、自分もやってみようかなという気になるんですけど、そういう話がちょっと少ないですよね。

(撮影:今井康一)

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