絶好調!韓国プロ野球「強さ」と「人気」のワケ 多くの観客を集める秘訣を専門家に聞いた

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――観客動員数の推移を見ると、年間300万人時代が長く続いていました。2015年になって一気に730万人となりました。また、2007、08年にそれぞれ100万人ずつ増えていますが、増えた理由は何だったのでしょうか。

まず、2007年には釜山(プサン)が本拠地のロッテ・ジャイアンツの調子がよかった年でした。このチームは最下位が定位置の時代が長かったのですが、チームの調子がよくなれば、ビジターとなる試合にもファンがわざわざ足を運んで観に行くようなチームなのです。日本で言えば、阪神タイガースファンのような感じでしょうか。

同時に、ロッテファンはソウル首都圏にも多く住んでいて、彼らがよく球場に応援に出かけるようになったためリーグ全体の観客動員数が増えました。さらに2008年の北京五輪での金メダル獲得(日本チームは4位)、09年WBCでの準優勝(同優勝)と、国際試合でも韓国チームが結果を残しました。それにより、プロ野球の観客動員数も増加にはずみがつきました。

きっかけは偶然の要素がありますが、そんなよい波を上手につかんで、今でも観客を増やしています。2013年からは1試合当たりの観客動員数は減少していますが、これは球団数が増えたためです。15年には、過去最高の観客動員数を記録しました。

若い世代に人気の韓国プロ野球

――2011年にスポーツマーケティングの調査機関であるSMS社が公表したデータを見ると、韓国国内5球場に訪れた高校生以上の観客1054人のうち、39.2%を女性が占めています。また、世代別では20代が42.5%と最も多く、続いて30代が26.8%と続いています。男女問わず、また若い世代から韓国プロ野球が支持されているようですが、この理由を教えてください。

2008年の北京五輪と09年のWBC準優勝当時、選手たちはとても若い選手たちでチームが編成されていました。そのため、若者たちと年齢が近い選手が国際舞台ではつらつとプレーして結果を残した。日本では今、野球はお父さん世代が見るものといったイメージがありますが、韓国ではそんなイメージはそれほどありません。

つまり、「野球を観に行く」という行為が、韓国の若者にはダサくないということです。日本でも、親の好きなものは若者から見るとダサく見えてしまいますが、それが韓国のプロ野球にはあまりないと思います。

また、日本でもようやく、球場を「ボールパーク化」してさまざまな楽しみ方ができるようにする構想が進んでいます。ところが韓国では、10年ほど前から球場の観客席の構成をグループで楽しめるといった多彩な座席を設けています。これは、韓国の人が個人でよりは集団として、たとえば友人同士で集まってレジャーを楽しむという習慣が強いことを念頭に入れてのことでした。

内野指定席の料金が日本円で1500円程度というお手ごろ価格も追い風となって、野球観戦をデートコースのひとつとして考えるカップルも多く訪れています。これには、人口構成的に日本よりは韓国のほうが若い世代が多いということもあるとは思います。

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