ソニー、「スライドパソコン」量産化の秘密 好調の「VAIO Duo11」、安曇野工場に行ってみた

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こうした独自の装置を用意できるのは、設計部隊と量産立ち上げ部隊が大部屋にいるからだ。量産工場の設計を担当するソニーイーエムシーエスGDP部の長澤敏行担当部長は「設計の早い段階から頻繁に打ち合わせをしているため、ほかには絶対に真似をできないようなギリギリのところまで追求できる。製造装置を自作できるのも強みだ。製品設計が終わったときには量産ラインも完成している、という形になっており、垂直立ち上げをできる」と胸を張る。

スライド方式を可能にした秘密兵器

この装置のおかげでスライドパソコンが実現した

DUO11の最大の特徴であるスライド型の構造も、「@安曇野」だからこそ実現できたものだという。左の写真を見てほしい。これはCPU・キーボード側と、ディスプレイ側をつなげているところだ。

1人の作業員が効率的に作業できるようにつくったのがオレンジ色をしている装置。写真のためわかりにくいのだが、この装置には2本の配線をすばやくつなぐためのノウハウが盛り込まれている。鏡が付いているのも、失敗することなく配線作業を行うための工夫だ。

「スライド型の難しさはヒンジの構造の問題で配線が難しいこと。手の届かないところに配線をするためにはどうすればいいのか。その難題を解決してくれたのが、工場の現場が開発してくれたこの装置。これがなければスライド型はあきらめざるを得なかった」(林統括部長)。

ソニーストア直販の場合、保護フィルムの貼り付けサービスを行っている

なお、「@安曇野」ならではの工夫としては、タッチ画面への保護フィルムの貼り付けサービスも行っている。クリーン度を保った囲いの中で作業員が丁寧に保護フィルムを貼っていた。

長野工場で生み出した製造ノウハウはEMSへ委託する際にも、活用している。平井一夫社長は1月17日のインタビューで「日本国内でしかできないものは国内でつくる。さらに国内工場には、量産の技術やノウハウを蓄積し、海外の自社工場やEMSへ展開していく役割がある。そうしたマザー工場、マザー製造事業所ということを日本で引き続きやっていかなければならない。円安が進んだとしても、この構造が大きく変わることはない」と発言している。

マザー工場としての役割という点では、長野工場は優等生的といえるだろう。あとは世界シェアを伸ばせるような差異化商品を継続的に生み出し、赤字が続くエレクトロニクス事業の損益改善に寄与できるかどうかが問われている。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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