インドがラジャン中銀総裁退任で失うもの 改革の舵取り役を追いやったツケは高くつく

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日本の経験がこのことをはっきりと示している。日本では、経済がいわゆるゾンビ銀行の重荷を負っていて、マイナス金利でさえも、成長に弾みをつけるのに十分機能していない。

この2年間、モディ政権とラジャン総裁の努力は結実し、インドは新興国の中で異彩を放ってきた。中国やブラジルが経済運営につまずく中、インドは分別あるマクロ経済政策を取る成熟国だとの印象を持たれてきた。

ところが、ラジャン氏と政府との間に確執が生じ、それが芳しくない方向に展開したことからすれば、インドもまた経済運営でつまずくのではないか、との懸念が浮上しても無理はない。

願ってもない逸材だったが

商品相場が上昇に転じ、中国経済がハードランディングするリスクが高まり、欧州連合(EU)が将来の不安に直面している現状で、インドにはラジャン氏の退任を軽く受け流す余裕はない。

この試練の時期、インドの金融政策の舵取り役としては、ラジャン氏こそが、願ってもない逸材であった。しかし、ラジャン氏の退任が決まった今となっては、モディ政権が断固とした行動で、RBIの信頼性を支える能力と独立性を備えた後任者を選ぶよう願うばかりだ。そしていったん選任した以上、優秀な中銀総裁は交代させることができないものだと、肝に銘じておくべきだろう。

週刊東洋経済7月9日号

ギータ・ゴピナート 米ハーバード大学教授

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ギータ・ゴピナート / Gita Gopinath

1992年インド・デリー大学卒。2001年米プリンストン大学博士。専門は国際金融、マクロ経済学

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