合理的な人ほど「お客は神様」と考えない 英国のバス運転手が乗客に文句を言えるワケ
「お客様は神様だ!」の精神からすると考えられないのですが、ロンドンではこの類の“交渉”が日常茶飯事だったのです。
「海外はサービスの質が悪い」とよく言われますが、必ずしもそうではないでしょう。サービスに対する考え方が違っているだけです。何から何までやってくれる日本のサービスが基準になってしまうと、すべての海外のサービスは「酷い」と思えるだけなのかもしれません。
イギリスでも「サービスが悪い」わけではなく、このバスの中での出来事のように、“お客様が神様”ではなく、“運転手と乗客の関係は対等”という割り切った考え方があり、そのうえで、ある種の緊張関係を伴ったサービスが成立しているのです。
口論のように見えるやり取りも、イギリス流のコミュニケーションです。彼らは議論をして、意見をやり取りすることで、お互いの妥協点、落としどころを見つけるのが上手いと思います。だから、「お客がつねに神様」という上下関係ではなく、対等にやり取りをして、お互いの言い分を確認しているわけです。
ストレスが少なくなる「これでいい」という感覚
「そんなふうに、割り切って働くなんて、それこそ無理だ」という人もいるかもしれませんが、「これでいい、という感覚」を持つことで可能になります。
「これでいい」という言葉からは、妥協したような、何かをあきらめたようなニュアンスを感じるかもしれませんが、イギリス人の「これでいい」には、ネガティブな面は決してありません。この言葉には、2つの重要な考え方が含まれているように思います。それは、
・本来の目的に立つことで、不必要なことをやらない判断をする
・決まったことをこなす感覚ではなく、つねに目的から逆算して最善の手段をとる
どちらも「目的意識」に関連していますが、これが、イギリス人の「割り切ることで、ストレスなく、淡々と仕事をする」ことに密接に関わっています。
そもそも私たち日本人には、「こうあるべき」という思いが強すぎて、「決めたことを、決めたとおりに実行すること」にこだわりすぎるきらいがあります。普段の仕事のやり方を考えてもそうでしょう。「一度、計画を会社側に発表したら、それを達成することにやっきになる」――そうして自らの首を絞めているようなビジネスパーソンも多いように思います。
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