英国とEU、「終わりの始まり」はどっちなのか 「離脱ドミノ」が即座に始まることはない

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「離脱ドミノ」に対する不安が広がっているが、英国に次いでEUを離脱する国が即座に現れることはなさそうだ。国民投票の実施要件は各国で異なるが、①EU懐疑政党が政権に就くか、②署名活動などを通じて国民投票を求める声が国民の一定数を上回ると、投票実施の可能性が高まる。

EU懐疑政党が国政レベルで一定の影響力を持つのは、フランス、イタリア、スペイン、オランダ、オーストリア、フィンランド、デンマーク、ギリシャ、ポーランド、ハンガリーなど、多くの国に広がっている。既にギリシャ、ポーランド、ハンガリーはEU懐疑政党が政権に就いているが、これらの国はEUからの離脱を希望しているわけではない。EU懐疑政党が政権奪取に近づいている国はフランス、オランダ、イタリアだが、今のところ主流派政党が結束すれば反EU政権の誕生は阻止可能な状況にある。

英国で働かなかった"危機バネ"がスペインで働いた

英国の離脱投票が他国のEU懐疑政党を勢いづけるか、安定を求めて主流派政党の支持拡大につながるか、6月26日のスペインのやり直し総選挙は英国民投票後で初の試金石となった。事前の世論調査で第2党に躍進するとみられていた新興左派政党のポデモスの統一会派は、昨年12月の総選挙から議席を上積みすることが出来ず、第3党に終わった。中道左派の最大野党・社会労働党(PSOE)を抜き、左派第1党として政権発足の機会をうかがうシナリオは叶わなかった。

そもそもポデモスは、強硬な反緊縮路線を通じてEUと対立関係にあるが、移民排斥やスペインのEU離脱を主張する政党ではない。ただ、政治空白の長期化に対するスペイン国民の不安に加えて、英国の離脱投票後の混乱への警戒感が、与党支持拡大につながった可能性がある。英国の国民投票で働かなかった"危機バネ"は図らずもスペインで働いた模様だ。

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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