英国とEU、「終わりの始まり」はどっちなのか 「離脱ドミノ」が即座に始まることはない

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キャメロン首相の辞意表明を受け、後継首相レースが開始される。首相選出は保守党内の党首選出を通じて行われ、議会の解散・総選挙は必要ない。10月に予定される保守党の党大会で後継首相が選出される予定だ。候補者は保守党の所属議員による投票で2名まで絞り込まれ、決選投票は党員による郵送による投票で行われる。

最有力候補はやはり、離脱キャンペーンの中心人物で、国民的な人気を誇るボリス・ジョンソン前ロンドン市長だろう。ただ、今回の投票で保守党議員の多くは残留支持に回った。ポピュリズムに訴え、残留派の同胞を厳しく非難するジョンソン氏の投票キャンペーンが、党内の亀裂を深めたとの批判の声もある。また、後継首相レースでの劣勢を挽回するため、離脱派に加わったとの噂も絶えない。自身の政治的な野心のため、国の分断を招いたとの批判もある。議員投票で十分な支持が得られるかが首相就任のカギを握ろう。

対抗馬としては、今回のキャンペーンでは残留派に加わったテレーザ・メイ内務相の名前が挙がる。同氏は、過去にEU批判を繰り返し、残留派に加わるか、離脱派に加わるか、その去就が注目された人物だ。保守党内の主流派からの支持は得られやすい。

EUとの協議には5〜10年かかる?

離脱投票後も英国がすぐさまEUを離脱する訳ではない。EUに対して離脱の意思を伝え、そこから2年以内に離脱協議で合意するか、合意しないまま2年が経過した場合に離脱する。ただし、英国以外のEU加盟国が全会一致で合意すれば、2年間の協議期限は延長できる。離脱協議では、英国内にいるEU市民や、他のEU諸国にいる英国民の取り扱いをどうするか、英離脱後のEU予算の拠出分担などが話し合われる。恐らくこれと同時並行で、離脱後のEU関係をどうするか、EU域外との通商交渉などの協議も開始されよう。

こうした協議をすべて2年以内に終えることは難しい。デンマークから高度な自治が認められているグリーンランドがEUの前身であるECから離脱した際には、協議に3年超の月日を要した。協議内容がより多岐に渡りそうな英国では、それ以上の年月が掛かるとの見方が一般的だ。おまけに英国政府は過去数十年、EU域外との通商交渉をEUが担ってきたため、自ら通商交渉を行った経験がなく、そうした人材も不足している。協議の長期化は避けられず、5年や10年単位の月日を要するとの見方も多い。

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