英国、EU離脱で欧州諸国から受ける「報復」 そう簡単に抜けれると思ったら大間違い

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まず、英国と他の27カ国が英国の離脱の方法について決定を下す。その後ようやく、EUは貿易についての話し合いを行おうとするだろう。ただし、離脱方法を決めるプロセスでは、複雑な法的・金融的な問題の解決が必要になる。また、一般市民の生活に影響するさまざまな問題の解決も必要だ。たとえば、年金や健康保険をどうするか、英国に居住し働いているEU市民の在留資格はどうなるか、またEU諸国にいる英国市民の在留資格をどうするか、などである。

政府関係者らは、離脱後の貿易・金融協定に関しては、非加盟国としての英国と交渉を行いたいと考えている。貿易交渉において、EU市民の英国在留資格や権利を、英国側の取引材料として使われたくないのだ。そうなると、交渉期間は第50条で定められた2年間を越え、終結までに何年もかかる可能性がある。

そうした中で、ロンドンのシンクタンク「欧州改革センター」ディレクターのチャールズ・グラントは、欧州委員会は英国に対して、まったく新たな方式ではなく、既存の三つのモデルのどれかを提示するのではないかという。三つのモデルとは、ノルウェー、カナダ、WTO(世界貿易機関)との取り決めのことだ。

英国が支払わなければならない対価

関係者らの話では、英国がEUの単一市場に残ることを英国が提案しても、フランスとベルギー、おそらくはドイツも、少なくともEU市民が引き続き英国に居住し働けるという取り決めがなければ、ほぼ確実に拒否するだろうという。いずれにしろ、いわゆるノルウェーモデルと呼ばれるこのような方式は、移民をコントロールするという名目で、英国の離脱派から強く反対されている。

フランスのシンクタンク「戦略研究財団」のカミーユ・グラン所長は、「いったん離脱したら、英国に優しくしようという気持ちは存在しなくなる」と言う。「英国が何を言おうと、どう思おうと、対価を支払わなければならない。他の国のEU離脱を防ぐためにもだ」。

フランスのメッセージは、ドイツのショイブレ財務相の言葉に似ていると、グラン所長は言う。「離脱は離脱だ。そうなったら、単一市場の恩恵は与えない。望むものだけを選べる加盟国にはなれない」ということだ。

グラント所長によると、「ドイツやオランダはもっと柔軟な対応を考えるかもしれない。しかしフランスとしては、離脱は決別であり、英国に対して厳しく対応しなければならない。そうすることで、チェコでも他の国でも、自国に有利な条件を引き出そうとするのを阻むのだ」。

(執筆:Steven Erlanger記者、翻訳:東方雅美)

© 2016 New York Times News Service
 

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