沖縄戦体験者の4割がPTSDに苦しんでいる

「君が代が流れると身体が震える」

蟻塚さんはこう強調する。

「沖縄の人にとって戦争による心の傷は、治ることがない、現在進行形の痛みなんです」

いきなり泣き出した

5月19日に元米海兵隊員で米軍属の男が逮捕された女性暴行殺害事件は、蟻塚さん自身も波状的なショック状態に陥り、数日間は言葉も出ず、不眠が続いた。

少し落ち着いて考えられるようになった今、沖縄の人々の精神状態が気にかかるという。

蟻塚さんは、

「今回の体験は、沖縄の人々を強烈に打ちのめしたのではないでしょうか」

と深く嘆いた。

1995年10月、沖縄で米兵3人による少女暴行事件に抗議する県民大会が開かれたとき、当時の大田昌秀知事は「行政を預かる者として、本来一番に守るべき幼い少女の尊厳を守れなかったことを心の底からおわびしたい」と謝罪した。沖縄の人々の内発的なエネルギーを結集させた95年の県民大会から21年。米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対し、政府に正面から異議申し立てをする翁長雄志知事も誕生した。

今回の米軍属事件では、翁長知事も6月1日に女性の遺体が遺棄された現場を訪れ、ひざをついて手を合わせ、「守ってあげられなくてごめん」と胸の中で被害女性に語りかけた、と報じられている。

「この21年間は沖縄の人たちのチャレンジングな姿勢を確認するプロセスであり、自己肯定の日々でもあったはずです。それがいきなり21年前に突き落とされた衝撃。これは大きな挫折というしかありません」(蟻塚さん)

事件後、被害女性の捜索に協力した同級生たちがとても傷ついているということや、辺野古新基地建設に反対し、キャンプ・シュワブゲート前で三線を弾いている人がいきなり泣き出したといった情報が蟻塚さんのもとに寄せられている。

「感情的なレベルの反応がボカボカ出てきて、急性ストレス障害みたいな状況にあるんだろうと思います」。そう語り、心を痛める蟻塚さんは「医療班として沖縄に行かなきゃいけないかもしれない」とも考えている。

米軍属の事件に抗議する6月19日の県民大会は、日帰りで沖縄に駆けつける予定だ。

「沖縄で今起きていることは大事な歴史の1ページ。その場にいなきゃいかんと思っています」

(編集部・渡辺豪)

※AERA 2016年6月27日号

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