百貨店とアパレル「不合理な商慣習」の正体 委託販売はなぜ重宝されてきたのか
当初は百貨店とメーカー側の持ちつ持たれつの関係だった仕組みも、いつしか百貨店側に大きく有利な取引形態になり、メーカー側にとっては、特にその納入手数料(値入率、歩率という呼称)が大きな負担になっていきます。
メーカー側はSPAという形態へ
メーカー側は自らが店舗を構えて販売まで手がけるSPA(製造小売業・1986年GAPが提唱した概念)という形態をとるようになりました。代表例は「ユニクロ」「G.U」を運営するファーストリテイリングでしょう。そして、いつしか百貨店一辺倒からショッピングセンター、ショッピングモールという商業施設への出店や路面への出店に活路を見いだすようになります。そういう意味では、経産省が今さら唱える「アパレル企業の直接販売などへの見直しも促す」などという流れは、すでに30年ほど前から始まっていたとも言えます。
また新興の有力な「駅ビルブランド」と呼ばれるアパレルメーカー、たとえば、「アースミュージック&エコロジー」(ストライプインターナショナル=旧クロスカンパニー)、「ローリーズファーム」(アダストリア)「ナノユニバース」(ナノユニバース)、セシルマクビー(ジャパンイマジネーション)などにとっては、はなから百貨店への出店は効率面でもブランディング面でも魅力に欠けているという判断で、ごく一部の百貨店を除いては積極的な出店はしていません。
駅ビルブランドは、今の時代に即したEC(電子商取引)への取り組みも積極的です。したがって、今の百貨店では品ぞろえの中には組み込むことができず、結果的に百貨店は若い世代を呼び込むことができないまま、なんとかアダルトやシニアといわれる世代にギリギリ支えられているというのが全国的な傾向です。
アパレルの観点でいえば、その昔は「なんでもそろっているから百貨店」であった業態が、今では「なんでもありそうでいて、欲しいものが何もない」業態になってしまっています。ただの場所貸し業とさえ揶揄されてしまっている業態には未来が見えてきません。そのために新興ブランドが参入したくなるような取引形態を構築しなおし、それを機に自主編集力を高め、過去のメーカーと百貨店だけの取引だけでなく、顧客を中心に据えた取引構造の構築を望んでやみません。
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