授業を教えるロバート・ウォルコット上級講師は、ケロッグ・イノベーション・ネットワーク(KIN)の共同創設者。グローバル企業、政府、NPOなどと協力して、大きな組織で技術革新、経営革新を起こしていく方法を研究している。2012年に開催されたKINグローバルサミットでは、協力企業として、GE、BP、シスコ、AT&Tなどが名を連ねている。
日本の慶應ビジネススクールで教鞭を執っていたこともあり、『社内起業成長戦略―連続的イノベーションで強い企業を目指せ』(日本経済新聞出版社)という著書もある。
授業では、既存企業を題材に、「もしこの企業で社内起業をするとしたら、どんな会社を作るか」というシミュレーションを行っていく。
チームごとに、起業のテーマを決め、顧客調査、データ分析、関係者インタビューなどを行いながら、ビジネスプランを作り上げる。
この社内イノベーションを起こす過程で、最も必要なのが、言い訳しない、異なる意見を否定しない=「Yes/and」という姿勢だ。
ウォルコットさんが、個人による起業がもてはやされている中、あえて、大企業の中で変革を起こすことの重要性を説いているのは、ケロッグの学生の多くが卒業後、事業会社、金融機関、政府機関など、大組織へ就職するからだ。
学生は、ケロッグで協調性を重視するリーダーシップを身に付け、組織の中で、その能力を発揮する。
井上さんは、ウォルコットさん自身が起業家なのに、あえて、大企業での社内起業に注力しているのが、とても現実的で、新しく感じたという。
「先生は、『今、起業することがもてはやされているけれど、それが本当に自分に合っているか考えたほうがいい。君たちには、組織の中でイノベーションを起こし、社会を変えていく力もあるのだから』という考え方なんです。大企業の中で、既成概念を打ち破る方法は、私たち自身の既成概念を破る方法でもあります」
ウォルコットさんは、最終授業を、こんな言葉で締めくくった。
「ビジネススクールの学生は、成功体験を積んでいる分、実は既成概念や常識にがんじがらめになっていることが多い。実際に檻を作っているのは自分自身だ。そこから抜け出しなさい。何をするにも遅すぎるということはない。自分の本心に従って、生きなさい」
井上さんはこの授業をきっかけに、自分にも、自分の人生にも「言い訳」をすることをやめた。
「言い訳しない、なんて難しいこと本当にできるんですか? 理想論じゃないんですか」と少し斜に構えて聞いてみたら、「訓練すればできるようになることをケロッグで学びました」と力強く答えてくれた。
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