2050年の世界と日本 わたしたちの暮らしはどう変わる?
広がる格差と家族の変容
よりミクロな変化に目を凝らすと、欧米企業と比べて、日本企業はグローバル化で明らかに出遅れている。今世紀前半、日本企業はグローバル化の勢いを一層加速させ、そのあらがいようのない奔流が、企業のあり方や従業員の働き方、そして家族の姿を大きく変えていくだろう。
製造業は名実共に日本の産業の主役の座から退き、サービス業が産業界の主人公になる。企業の形も一変し、「企業と消費者、企業同士の境界があいまいになり、ネットワーク型企業が増える」(博報堂生活総合研究所の嶋本達嗣所長)だろう。
人材争奪戦も激化する。「限られた優秀なタレント(人材)を企業同士が共有する時代がやってくる」(ボストン コンサルティング グループの東海林一氏)。雇用の階層化が進み、格差の拡大は否めない。
何百人ものグローバル人材をスカウトしてきた縄文アソシエイツの古田英明社長は、「海外でも通用する日本人を年収20万ドル程度で確保することが非常に難しい」と痛感している。現在海外で暮らす日本人は120万人。日本国内で稼ぐことができなければ、腕に覚えのある職業人は海外に渡り、「和僑」になる覚悟が必要になるかもしれない。
地域や家族、世代間の格差も広がる。人口減少によって地方の無居住化地域が広がり、特に家族の変容は著しい。夫婦と子どもで構成される典型的な家族はもはや少数派に転じ、単身世帯は4割を超える。中央大学の山田昌弘教授は「配偶者と子どもを持ち、経済的に安定した標準家庭を営める若い世代は、半分になる」と予測する。
人口や気候変動のようなメガトレンドが厄介なのは、変化が非常にゆっくりであることだ。人口も気候も、確実に変化しているが、われわれの目や耳ではほとんど感じられない。せいぜい数年単位の物差ししか持っていないわれわれには、事態がよくなっているのか否か、感じ取れないのだ。それゆえ、対応は遅れがちになってしまい、数十年単位の大変化についていけないでいる。