2050年の世界と日本 わたしたちの暮らしはどう変わる?
不安の時代を反映してか、未来予測が流行している。中でも、英『エコノミスト』誌の未来予測本『2050年の世界』の売れ行きが順調だという。12月に来日した同誌コンサルタントエディターのジョン・アンドリューズ氏は「日本の将来を考えると、人口と地政学、教育の3点がカギを握る」と話す。
同氏曰(いわ)く、日本は、社会が十分豊かになる前に急速な高齢化を迎える中国よりはましだが、依然として人口問題は深刻である。日本は地政学上、中国、ロシア、北朝鮮という三つの核保有国に取り囲まれており、ちょっとした衝突から対立関係がエスカレートしてしまうと、大惨事に直結しかねない。さらに物的資源のない日本にとって最大の財産はヒトであり、移民の受け入れと若者の教育が重要なのだと指摘する。
確かに、日本を取り巻く環境は厳しい。人口と気候を中心に、今世紀前半の未来像を探っていくと、われわれ日本人はそうとう大きな変動を経験することが予想される。
世界の人口は、中国とインドが主役に躍り出る。GDPも両国が最大となる。人口については、今世紀後半はアフリカの世紀を迎える。一方、わずか38万平方キロメートル足らずの国土に、1・2億人がひしめき合って住む世界10位の人口大国・日本の姿は、2100年には見る影もない。
気候の変動はじわじわと地球をむしばんでいく。世界銀行が11月に出した最新の報告書「Turn Down the Heat」は、「今世紀末までに世界の気温が4℃上昇する確率は20%。深刻な干ばつや洪水を引き起こし、途上国や貧困層に深刻な影響をもたらす」と警告している。
一方、エネルギー分野では新興国の需要増と米国のシェール革命の帰趨が地域間のパワーバランスを大きく変える。日本の場合、これに3・11の経験という変数が加わる。「原発が怖い、放射能は危ない、だから原発を減らす、というほど物事は単純に決められない」(田中伸男・元IEA事務局長)。無資源国の日本には、脱原発のスローガンを振り回すだけでなく、世界のエネルギー力学を見据えながら、現実的な最適解を模索する知恵が求められている。