内需減退で精製能力削減迫られる石油業界 コスモと東燃の出方に焦点

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なお同社は、12年6月に千葉製油所で事故を起こし稼働を停止、事故関連特損や繰延税金資産取り崩しで今期は740億円の最終赤字に転落する見通し。ただ、千葉製油所は13年1月に一部再稼働し、同6月にフル稼働させる予定としている。

東燃は和歌山と川崎組み合わせた「部分撤退」も

一方、東燃は精製能力削減にいまだ着手していないが、12年7月下旬に川崎工場の分解装置の増強に踏み切り、業界他社を驚かせた。小幅な増強とはいえ、これによって東燃に必要とされる能力削減は12.7万バレル/日となり、堺か和歌山のどちらか1カ所の精製停止で済むことになった。

東燃の場合、和歌山のトッパー2基のうち1基と、川崎の3基のうち1基を組み合わせて削減する「部分撤退」の道も残る。東燃は12年6月、親会社のエクソン・モービル日本法人を買収。「もはや民族系。ドライに丸ごと撤退とはいかないだろう」(業界筋)。同社は、13年2月の新中期計画発表までに対応を決める方針だ。

問題は、高度化法対応だけで長期的な需給ギャップを解消することが難しいことだ。「これでは済まない。大手統合を含め、新たな業界再編もありうる」(同)。その意味で、なお東燃の22%の株式を握るエクソンや、コスモに20%出資するアブダビ政府など、外資大株主の動向には要注目だ。

 

中村 稔 東洋経済 編集委員
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