貧困者を安易にコンテンツ化してはならない 異様な容姿の奥に見え隠れする「本当の彼女」

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「前に話した(ホストの)彼氏が店の店長とトラブっちゃって。そんで傷害で訴えられて、彼氏もケガしてたんだけどこっちは診断書取ってないけど向こうは診断書あって、なんかわかんないけどその医者もグルで本当はかすり傷なのに眼底骨折って言われて診断書作られちゃって。ウチは売り掛けと彼氏に20万円渡したんだけど、彼がウチの身も危ないからちょっとおまえガラ交わせ(身を隠せ)って話になり。結局(風俗店の)移籍の話とかもなしになっちゃって……」

とつとつと語る言葉は初回取材時のように'80年代風の語尾伸び伸びではなかったが、これが瑠衣さんの本来のパーソナリティなのだろう。

「それで今はどうしてるの?」

「元カレの家にいます。仕事はしてないけど探してる」

ピンと来た。元カレとは、瑠衣さんを僕に紹介した援デリ業者の前に瑠衣さんを使って売春をさせていたという、元ヤクザの中年男のことだろう。援デリ業者からは、この元ヤクザと売春の縄張り問題でもめ事があった際に、瑠衣さんを「押し付けられた」と聞いていた。要するに元カレとは、かつて瑠衣さんに売春相手の男を紹介してカネをピンハネしていたヒモ男だ。

「どうするつもりなの……」

「わかんないよ……」

そう言って下を向いて汗ばんだ髪の毛をかきあげる瑠衣さんの大きな頭に、かさぶたの塊が見えた。「元カレ」から暴力を受けているのだろうか。

それにしても前回の原宿取材とのテンションの差はどうしたことか。たぶんクローゼットに200万円分のロリ服もウソで、原宿に着て来た安物ロリータ服も記者からの取材ということで気合いを入れて着込んできた一張羅の勝負服だったのかもしれない。そう思うと、なんだか瑠衣さんの瑠衣さんなりの一生懸命さが、その孤独が、悲しくて仕方なくなってきた。

その後、何回かに分けて、彼女の生い立ちを聞き取り取材をした。

貧しい祖母に預けられた中学時代

散漫でわき道にそれがちだった話のつじつまを合わせると、彼女は実年齢34歳。千葉県北部出身で、障害のある弟と3人暮らしの母子家庭で育った。父親のことは記憶にないが、弟が生まれて障害があることがわかった時点で行方をくらましたという。母親は病院の看護助手をしていたが、瑠衣さんの小学校時代から母娘は性格が合わず、母からはたびたび暴力を振るわれた。

中学になると瑠衣さんのほうが力が強くなり、母親にケガをさせたことをきっかけに、茨城県南部の利根川沿いに住む母方の祖母に預けられることになる。祖母は貧しく、細々と自給自足に近い農業をやっていた。祖母は母ほど頻繁ではないものの瑠衣さんに暴力を振るったが、農業で鍛え続けてきたその腕っぷしの強さは母の比ではなく、瑠衣さんは抵抗の意思を失ったという。

瑠衣さんは祖母の下で中学時代を過ごし、一応、定時制の高校に入学するも、1年で退学。することもなく、千葉県の柏駅近くを歩いていたところを路上スカウトされ、地場のデリヘルに年齢をごまかして入ることになった。

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