タイで航空会社設立、HISが狙う"リベンジ" スカイマークの苦労を糧に

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平林朗社長は「アジアでの航空機需要は、これからもっともっと拡大する」と見ており、アジアパシフィックエアラインズでは日本を含むアジアの航空需要を広範に取り込んでリスクヘッジする戦略を取る。年末年始やゴールデンウィーク、7~8月の夏休みなど、日本人の旅行者ピークの約5カ月間は日本発着の便数を増やし、他の時期は別地域での発着を増やす。

「タイの正月は4月中旬で、日本ではオフシーズンにあたる。中国の旧正月(1月後半から2月)も同様」(平林氏)。就航の1年後には、日本からハワイのホノルルへ飛ぶ便なども計画しているという。

HISの足元の業績は好調

HISが12月14日に発表した2012年10月期決算は、連結売上高が4314億円(前期比13.3%増)、営業利益113億円(同20.3%増)。九州産業交通ホールディングスの子会社化に加え、ハウステンボスが客数、客単価ともに伸び15%増収129%増益と絶好調。

日本からの海外旅行客が2000年の記録を抜き過去最多の1850万人(推計)に達することなどを背景に、主力の海外旅行予約も堅調。尖閣諸島問題など外交摩擦から中国、韓国行き客が期末にかけ頭打ちとなったものの、通期で初の900万人の大台を突破するなど、各部門が堅調に推移した。

今2013年10月期は、九州産交が通気貢献(前期は3カ月分)。ハウステンボスもイベント強化で増収増益基調を維持する見込みで「立ち上がりの集客は好調で、第1四半期決算発表時に上方修正できそう」(澤田秀雄会長)な勢い。2013年の海外旅行客は1900万人台へ微増が予想されている。年末年始はカレンダーの日並びがよく、欧州オーロラ観光など遠方への旅行客が増えそう。冷え込んだ中国、韓国への渡航も徐々に回復傾向にある。

 HISはネット予約に加え、国内ツアーを強化しており、外交問題や戦争・伝染病などにマインドが大きく左右されがちな海外旅行の収益変動リスクを徐々に緩和させていく。海外現地客に向けた旅行事業も強化しており、タイやインドネシアで多店舗化を進めている。アジア発券センターなど、管理部門のオフショア化で経費を抑制し、前期に引き続き過去最高純益を更新する見込み。澤田会長は「LCCでアジアは大航海時代を迎える」と睨んでおり、テーマパーク、ホテル、旅券販売と並び立つ新たな収益マシンに、航空事業を再び加えることができるか。

山川 清弘 東洋経済『株式ウイークリー』編集長兼「会社四季報オンライン」副編集長

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やまかわ きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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