筆者は1963年(昭和38年)生まれだが、本作のベースとなった伝説のテレビアニメ「妖怪人間ベム」の印象が非常に強い。68年(昭和43年)10月から69年(昭和44年)3月まで26話放送された。そのあとも、何回も再放送され、同年代の方のほとんどはご覧になっているのではないか。
何しろ異色なアニメで、最も醜いヒーローともいわれるほどであった。彼らは科学者の実験で生まれた、人でも怪物でもない異形の生物:妖怪人間なのである。もともとのアニメでは血は緑、指は3本であった。
子供のころ、このアニメを見ていてそれまでのアニメとは違うものを感じていた。建物をはじめとして、全体的な雰囲気に異国情緒漂っているのである。大人になって調べて分かったのは、このアニメの製作は日本の会社であるが、実際には韓国で作られたものであること、さらには、アニメ自体が輸出目的であったとのことである。そのため、異国情緒が漂っているのである。そのころからアニメ業界は産業的にも進んでいた。
さてこの『映画 妖怪人間ベム』であるが、2011年10月から12月まで、日本テレビ系列『土曜ドラマ』枠で放送されたリメーク・ドラマの映画化で、キャストも一緒である。映画版オリジナルのキャラクターで、人間でありながら妖怪の能力を持つ“人間妖怪”も登場し観月ありさが扮している。
怪異な姿に正義の心を持つ妖怪人間のベム(亀梨和也)、ベラ(杏)、ベロ(鈴木福)は名前の無い敵(柄本明)と戦いを続け、人間になることよりも人間を手助けしていく道を選び、あてもなくも放浪していた。そんな彼らは、たどり着いた街で連続して不可解な事件に遭遇。事件の謎を追う中、ベロは巨大製薬の新薬開発研究者の娘みちると出会い、恋心(初恋)を抱く。その後、遭遇する史上最強の妖怪などとの壮絶な戦いが続いていく・・・・。
そもそもこのシリーズは、妖怪モノではありながらも、人間社会の様々な問題を取り込んでいた。敵から「人間は愚かで不完全な生き物ですよ、それでもあなたたちは・・・人間になりたいですか」と言われる。筆者も考えさせられる。科学者も妖怪人間を作ったのは正義を失った乱れた世界を正すためだった。
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