「何でもあります」では地方に客は絶対来ない 超細分化する旅行ニーズに追いつけるか
山下:旅先で個人が求めているものも多様化しています。個人がどう変わっているか、何を求めているか、現代はとらえ所がない時代です。
観光地も旅行会社も、消費者の行動変化をリアルタイムに敏感にとらえられるかどうかが問われています。観光業界全体の課題ですね。
団体客向けの施設で、いかに個人客に対応するか?
永井:一方で、観光地ではすでに団体客向けに使ってきた巨大な施設があります。
製造業であれば工場を海外に移転したり、企業判断で施設リニューアルができますが、地方では多くの関係者の利害が複雑に絡むわけで、ハード面はそう簡単にリニューアルできません。これは大きな課題ですよね。
山下:そのとおり、簡単ではありません。でも方法はあります。たとえば当社が関わっているものではないのですが、河口湖がかなり以前よりすばらしい取り組みをしています。河口湖周辺には団体客向けのホテルが多くあります。
すべてのホテルを全面リニューアルするのは難しいですよね。そこで河口湖町の旅館組合が連携して、富士山5合目までご来光を見て帰ってくる「富士山ご来光ツアー」を毎日行っています。富士山ご来光ツアー株式会社という会社まで作っています。
永井:なるほど。会社を設立して、仕組みを作っているわけですか。
山下:たとえば個人で富士山5合目までタクシーを手配して行くと、往復で数万円かかりますから、敷居がすごく高いですよね。そこでこの仕組みで、河口湖の各旅館が予約を入れて毎日運行するようにすれば、個人客は参加しやすくなります。
午前4時すぎにフロントに集合して、バスで各旅館でピックアップして、5合目に行きます。つまりみんなでやることでスケールメリットが生まれています。
永井:長野県阿智村が「日本一の星空ナイトツアー」で村おこしに成功していますが、その原型みたいなものですね。
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