「何でもあります」では地方に客は絶対来ない 超細分化する旅行ニーズに追いつけるか

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山下:ヨーロッパの街並み世界遺産など、すばらしい観光地が世界にはたくさんあります。JTBはそこに人を送るのが仕事だったわけです。では日本はどうだろうか、どうやって観光地を作っていくのか、と考えてきました。特に2001年の9.11で、さらに私自身考えが大きく変わりました。

永井:あの同時多発テロですね。

山下:ワールドトレードセンターに飛行機が突っ込んだ瞬間、「日本の旅行市場は大変なことになる」と直感しました。実際、それまで自分の多くの仕事が海外旅行でしたが、この時期、日本人はパタッと海外に行かなくなりました。会社も経営的に大変厳しい状況になりました。

この時に「そもそも旅行会社はこれでいいのか?」と考えましたね。日本人を海外に送るのも大事です。同時に海外からも沢山の人に来てもらうことが大事だとわかったんです。そんな中でJTBの各地にある現場でも、「旅行会社としてできる、地域プロデュースとは何か」という模索が始まっていたのです。

2007年が転換点だった

永井:いま「地方創生」と言われている動きが、すでに15年前くらいから胎動していたのですね。

山下真輝氏

山下:振り返ってみると、ターニングポイントは2007年頃だったでしょうか。それまでの国内観光は団体客が多かったのですが、個人客の割合がどんどん増えて、2009年以降は個人旅行の比率が7割以上を占めるようになったと言われています。

永井:団体旅行というと高度成長、バブル期という印象もあるのですが、比較的最近まで多かったのですね。意外と遅い印象です。

山下:それまで徐々に進んでいたのが顕在化したのですね。今でも地方に行くと、部屋数が多いホテルが沢山あります。人口増加と経済成長を前提に、旅行のビジネスモデルは作られてきたんですね。しかしバブルが弾けて以降、リーマンショックや東日本大震災を経て、人々の価値観は大きく変わりました。さらにSNSで地域が直接消費者にアピールできるようになりました。

永井:社会全体も成熟化し、ニーズも多様化してきた時期です。旅行へのニーズも、個人のライフスタイルごとに細やかになってきているということですね。

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