牧原:それについては、自民党が次世代を担う若者向けに打ち出したメッセージ「レールからの解放」があてはまると思います。
党の財政再建特命委員会(委員長は稲田朋美・党政調会長)の下部組織である「2020年以降の経済財政構想小委員会」(橘慶一郎委員長、小泉進次郎事務局長)で議論し、この4月に発表したものです。
衆議院は当選3回以下、参議院は1回の議員計20人からなるメンバーでまとめたもので、2020年以降の日本を「第2創業期」にすると位置づけ、政治が個人の新しい生き方にあわせるよう、提言をしました。
まさに有馬さんがおっしゃったように、今までの日本社会では一本道のレールを走りぬくような生き方が求められてきたわけですが、少子高齢化、長寿社会の中で、もはや「従来のやり方」だけでは通用しないはずなのに、現実はレールから外れると、転職も子育ても難しい。この「ずれ」が閉塞感につながっているのです。だから政治がこの「ずれ」をたださないといけません。
有馬:高校までの義務教育化というのも一つの考え方なのかもしれませんが、日本はこの延長線上で、半ば当たり前のように大学を卒業し、社会人になる人が多い。例えば、今でもなくなったわけではありませんが、中学を卒業して宮大工になるとか、本来は多様な働き方があるはずです。実際、これから一段とネット社会が進むと、学歴はほとんど関係なくなって、ネットを通じたものの売買やサービスを通じて、儲かるヤツとそうじゃないヤツの「優勝劣敗が決まる」という人もいますね。
教育と仕事がもっと結びつく世の中に
牧原:今の日本は、学校で学ぶことと、仕事の距離が遠いのだと思います。この二つはもう少し結びつくことが大事です。日本はもっと専門家的にやっていく人が多くても良いはずです。この関連で、以前、国際競争力で世界首位を走るスイス大使にお話を伺ったことがあります。
大使は逆に「なぜ日本人はそうまでして皆大学に行くのか」と尋ねてきました。日本でも「企業内大学」のような組織を設けているところはありますが、スイスでは大学に行かず、中学を卒業して企業に就職する人も多い。就職すると企業内大学の中で、例えば「時計の仕組み」や「ブランドとは」といったことを実践的に学ぶわけです。仕事に役立つから、学ぶ意欲が違います。一方で大学に行く人は本当に学ぶことが好きな人だから猛烈に勉強します。
企業内大学は、中世からの徒弟制度が企業内大学に変わったともいえますが、とても参考になります。今の日本は、大学の2年まで一般教育を受けるのがまだ多数ですが、これは長すぎます。
一方で、人間は市場万能主義のような環境のもとで「カネ儲けマシン」になってはいけない。私は米国で生活した経験もあるので申し上げるのですが、やはり米国社会などは、お金を儲けることに走りすぎています。教育を通じて、日本では「健全なお金儲けができる人」を育てる必要があります。
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