サブプライムも何のその 好調を維持するシリコンバレー
サブプライム問題に端を発して米国経済は景気後退に直面しているが、シリコンバレーの代表的なIT企業は不況どころか好調な業績を上げて続けている。グーグルの2008年1~3月第1四半期決算は、インターネット広告減速との予想に反し、総売上高は前年比42%増の51億9000万ドル。インテルの同期売り上げは97億ドルで、前年と比べ9%の増加を維持した。このほか、インターネット・オークションのイー・ベイは2割強の増収増益、アップル(2007年10~12月)は、売り上げ・利益ともに過去最高を記録している。シスコ・システムズも7.2%の増益、ネットで企業向けソフトサービスを手掛けるセールスフォース.コムも第1四半期は前年同期比で55%の増収となった。
好業績の理由は、米国外からの売り上げが大きく貢献しているからだ。グーグルの第1四半期を吟味すると、米国内検索件数の伸び率はこれまでより鈍化しているものの、海外事業が好調で海外からの売上高比率が初めて5割を超えた。大手各社の米国外での売上高は5~8割にも達しており、米国の景気冷え込みを補った格好だ。景気後退で、アジア通貨やユーロに対してドル安が進んでいることも追い風となっている。
底力は移民を受け入れる国際労働力から
シリコンバレー企業のこうした海外市場受けする強さの源泉は、果敢にインターナショナル・マーケットに挑んでいく積極性だけからではない。シリコンバレーのうち、とくにIT企業はもともと国際市場を重視しているからだ。
その背景には、優秀な米国外出身の従業員を積極的に雇用しようという企業の姿勢があるからだ。労働者は、アメリカ人だけでなく、多くの他国からの移民や海外派遣で構成されている。とくに技術職では英語がイマイチでも、能力があればシリコンバレーで職を得られる機会は多い。シリコンバレーでは、インドと中国からの移民技術者が一大勢力となっていることはよく知られた事実だが、それ以外の様々な国からも労働者が集まっている。少数派とはいえ日本人ももちろん活躍している。
米国外出身の労働者が活躍するがゆえに、自然とシリコンバレー企業の海外投資も盛んになる。例えばインテルはベトナム工場設立のために10億ドルを投じ、従業員4000人規模の半導体組立工場建設を決めた。セールスフォース.コムは日本市場を重視し、東京の事務所を最近拡張したばかり。アップルは2006年からソフトバンクと提携、オラクルも2006年にインドの金融機関向けITサービスアイフレックス・ソリューションズに1億2500万ドルの投資をした。
底堅いシリコンバレーの景気
こうした企業業績を背景に、シリコンバレーの景気は底堅い。
IT技術者の雇用紹介企業で働くアレックス氏は「リッセッション(景気後退)とメディアが騒ぐけれど、企業の求人はあるし実感がわかない」と言う。仕事でニューヨークから引っ越してきたばかりのウェブ・デザイナー、クリスティン氏も「ニューヨーク並みに食べ物の値段が高いし、アパートでも先月から賃料が上がっている」と語る。
地元不動産業者によれば、「戸建て住宅の不動産価格は下がっているが、月々の家賃収入が見込める賃貸物件は堅調」という。ちなみにシリコンバレーの一戸建て平均価格は前年と比べ、9.3%下がって68万4500ドル、マンションは1.3%減の51万3000ドルで、3月の月間取引件数も過去最低の1105件にとどまっている。とはいえ、シリコンバレーの中心都市・サンノゼの街中では、オフィス・住居混合のビル建築があちらこちらで進行中だ。シリコンバレーを成すサンフランシスコ湾岸のいわゆるベイエリアのアパート賃貸料はいまだに高水準で、とくにサンノゼ、パロアルトなどがあるサンタクララ郡、サンフランシスコの占有率は全米平均より相当高い。サンノゼのアパートの賃貸料は平均で月1660ドルと、前年同期比では9.1%上った。シリコンバレー始めサンフランシスコ湾岸地域のソフト、エレクトロニクス等の企業雇用が比較的堅調であることが、賃貸料が上がっている理由だ。
確かに「洋服販売の小売で働く友だちはレイオフされた」とクリスティンの言う様に、シリコンバレーでも小売業、金融業、建設業の失業は増加気味で、失業者は今年3月でサンタクララ郡で5.5%に上る(カリフォルニア全体では今年3月で6.2%)。そうした中でも、IT企業では積極的に雇用を拡大するところも少なくなく、これが現地の景気を下支えしている。
(Ayako Jacobsson)
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