BL、TL中心の漫画コンテンツは、ガラケーでよく売れた。しかし、ガラケー時代が終わり、スマホ時代がやってくると、売り上げが落ち始めた。BL、TL専門のプロバイダに聞くと、「売り上げが落ち出したのは、去年の後半から。それまでは人気作家だと10万ダウンロードなどすぐ行ったのに行かなくなってしまった。今年はもっと落ち込んでいる。前年比で60%という業者もある」と言う。
実は今、こうしたエロコンテンツの配信業者がいちばん、キンドルが売れることを望んでいるのだ。
それでは、こうしたBL、TLなどの電子書籍を買うのは、どんなユーザー(読者)なのだろうか?
まず間違いなく、私が書いたことに反論してくるような、紙もよく読み、電子のよさと紙のよさを比較し、さらに端末ごとのスペックやサービスを比較できるような人々ではない。本を読む人間を読者と定義するなら、BL、TLユーザーは読者ではないのだ。電子書籍のみの特殊なユーザーなのである。
知り合いのBL、TL専門プロバイダによると、BL、TLユーザーは、書店にほとんど行ったことがなく、教科書以外にはほとんど本を読まない若者、しかも女性が中心だ。
BL、TLユーザーはどんな人か
かつてケータイ小説の読者も、このようなユーザーが中心だった。BL、TLユーザーはその後継世代であり、たとえば、三浦展氏が『下流社会』で描いたような、地方都市のロードサイド文化圏にいる女性たちだ。
彼女たちは中学から高校にかけて「パケット定額制を使ったケータイのインターネット」を初めて使いこなし、「モバゲー」や「GREE」「魔法のiらんど」などにはまり、今、ガラケーからスマホに乗り換えている最中だ。
BL、TL読者のアンケートを見せてもらったことがあるが、そこには、こんな本音が並んでいた。
「夜寝る前に急に読みたくなります。そんなとき、電子書籍は超便利」(25歳、看護師)。
「BL漫画を部屋に置いていたら親に見られて気まずくなってしまいました。電子なら親バレしないですむのでありがたいです」(20歳、派遣OL)。
「カレシに聞きたくても聞けないことがこれでわかるんです。前は通販で買っていたけど、読んだあとの処理に困っていました。その点、電子はいいです」(22歳、トリ―マー)。
職は不安定で、収入も少なく、孤独で友人も少ない。そういう若い女性たちに支えられて、これまで日本の電子出版は発展してきた。こうした経緯を無視した電子書籍論など机上の空論だ。
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