市場の関心はすでに、来年の日銀人事に

吉崎達彦が分析する総選挙後の焦点

衆議院の名札が間に合わない!?

ところがここにボトルネックがある。驚くなかれ、衆議院の名札が間に合わないというのだ。衆議院議員の座席には、それぞれ手書きの名札があるけれども、あれは全部手作業で、選挙結果が出てから準備するのが慣例となっている。しかも乾かす作業があったりするから、「とてもではないけれども、1週間では間に合わない」らしい。

そんなもの、今の時代に印刷では駄目なのか。あるいは現職議員の分は、今のものをそのまま使えばいいではないか。いや何だったら、当選確率が高そうな候補者の名札を今から作っておく手もある――などと思うことしきりだが、長年の国会における慣習は重いのである。どうやら特別国会の召集は翌週となり、予算の編成は年が明けてからということになりそうだ。

予算案の決定が早くても13年1月末ということは、国会審議は3月にずれ込み、法案成立は4月末から5月ということになるだろう。幸い今回は「3党合意」があるので、特例公債の発行をめぐって国会が空転することは避けられる。それでも年度末からは「つなぎ」予算が必要になる。年明け後に召集される通常国会では、真っ先に補正予算を編成する必要がある。

永田町の一部では、「ここはぜひ、大型補正予算を」という大合唱が早くも起きている。10兆円、なんて声もあるというから驚きだ。年明け後の景気が心配というのもさることながら、来年春の景気が悪いと何かと具合が悪いのだ。

その理由は消費税増税のスケジュールにある。今の消費税増税法案には、景気弾力条項がついている。来年の9~10月に景気があまりにも悪いようなら、増税は中止することになってしまう。この場合、最も重要な指標は例年8月中旬に発表される4~6月期GDP速報値である。この数字が思わしくないと、14年4月からの消費税増税ができなくなるかもしれないのだ。ゆえに4~6月期の景気は重要である。

上記はいささか倒錯した議論に聞こえるかもしれない。無理やり景気を浮上させてまで、増税を目指さなければならないというのは確かに妙な理屈である。ただし来年、消費税増税を見送ることになってしまうと、「14年3月末の駆け込み需要」に期待している業界が大打撃を受けることになる。住宅関連産業などは、すでにそれを当て込んで活動している。これはこれで大混乱になってしまうだろう。

民主党が日銀総裁人事に一定の影響力行使へ

財政政策について触れたついでに、金融政策についても軽く述べておこう。市場の関心事は、今や「誰が総理になるか」よりも、「誰が次期日銀総裁になるか」のほうが高いと言っても過言ではあるまい。そして現在の白川方明総裁の任期は来年の4月8日までだ。仮に「日銀バッシング」発言が相次ぐ自民党の安倍晋三総裁が次期首相になれば、「リフレ派」の次期総裁が実現するかもしれない。それに期待するか、懸念するかはさておいて、この人事の行方は注目の的である。

ところがだ。仮に総選挙後に自民党と公明党の自公政権ができているとしても、日銀総裁は国会同意人事であるから、参議院での承認を得なければならない。仮に自公合わせて衆院で3分の2以上を確保することになっても、こればっかりは通らない。参院の現行議席は自民が84議席、公明が19議席で合わせて103議席。過半数の122には届かない。リフレ政策を掲げる「みんなの党」の8議席が協力しても、あと一歩足りない。となれば、やはり自公民の3党合意によって人選することになるのだろう。ちなみに参院の民主党は89議席もある。

ということは、民主党が難色を示すような人選はさすがに難しいということだ。もしも「安倍次期首相」がリフレ政策を切望するのであれば、むしろ3月19日に任期満了を迎える山口廣秀、西村清彦両副総裁の代わりに、ハト派の審議委員を投入するほうが話は早い。すでに民間出身の佐藤健裕、木内登英両審議委員がハト派なので、2人増えれば9人中4人がハト派となり、政策委員会は一気に雰囲気が変わるだろう。

次ページさて、ここからはお待ちかね・・・
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