三菱重工と日立の本気 火力事業を統合、相乗効果で世界へ挑む

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大きな引き金になったのは、顧客である国内電力会社の経営環境激変だ。東日本大震災の原発事故をきっかけとした原発稼働停止により、電力会社は軒並み巨額の赤字に転落し、財務悪化が著しい。加えて、業界の高コスト構造に厳しい批判が集まり、電力業界で急速にコスト意識が高まりつつある。

それを象徴するのが、震災後初の大型案件となった中部電力の西名古屋火力発電所をめぐる業者選定だ。今回、1000億円規模の費用を投じて同発電所を最新鋭のガス火力発電所に刷新するに当たって、中部電力は昨年、三菱重工と東芝・GE連合による競争入札を実施。これまで電力業界では随意契約が多く、入札でも必ずしも価格が最重視されていたとは言いがたい。

今回の焦点は2割以上安いコスト

しかし、今回の入札では従来にないほどコストに重点が置かれた。それも初期費用のみならず、完成後の長期にわたる定期保守・メンテナンス費用も競わせた。最終的に落札したのは東芝・GE連合(内定は今年春)で、受注金額は従来の相場より2割以上安かったといわれ、業界関係者に大きな衝撃を与えた。

ただでさえ、国内電力会社の設備投資は長期減少傾向にある。そのうえ、今後は中部電力のような競争入札が業界の常識になる。当然、発電インフラ業者にとっては、受注単価が大幅に下落し、国内事業の急激な収益悪化が避けられない。

会見の席上、三菱重工の大宮英明社長は事業統合に踏み切る理由について、「日本の企業が国内で消耗戦をするより、一緒になって世界で戦っていくべきだと判断した」と説明。その発言からは、国内の電力インフラ商売の先行きに対する強烈な危機感が感じ取れる。

一方、世界に目を転じれば、風景はがらりと変わる。先行きの厳しい国内とは対照的に、海外での電力インフラビジネスは成長産業だ。

新興国の経済・産業成長により、世界の電力需要は右肩上がりで拡大。特に石炭や天然ガスを原燃料とする火力発電の潜在需要は大きく、IEA(国際エネルギー機関)の予測によると、火力による発電設備容量は35年までに7割前後増える見通しだ。

ただ、海外では、米GE、独シーメンスが圧倒的な存在感を誇る。さらに、現時点では技術面で見劣りする韓国、中国勢も自国で実績を積んでおり、他の産業と同様に新興国市場で日本勢の強力なライバルになるのは時間の問題だ。「欧米勢のみならず、中国、アジア勢との競合が激しくなる。今回の再編で競争力を高め、早期に世界3強の一角に入りたい」と大宮社長は期待を込める。

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