円安攻勢をかける自民党 市場動向を読む(為替)
もちろん、この中で市場の焦点となっているのは、(4)の金融緩和に関する提言である。
この中には、2%の物価目標の設定、日銀法の改正、岩田氏が提案していた官民協調外債ファンドの創設などが含まれている。これらは自民党の政権公約にも明記されることになった。
もっとも、基本的にこれらは、8月末に自民党が発表した「日本経済再生プラン」の中で、日本の「産業投資立国化」と並んで提案されていたものが多く、特段のサプライズはない。一方、物議を醸した「日銀による国債引き受け」については、安倍総裁自らが「直接引受けではなく、市中買い入れのことだ」と火消しに回り、政権公約に盛り込まれることもなかった。
財政支出拡張で内需振興なら円安に
さて、今回の中間報告で円安を促す、もう1つの政策として注目しなければいけないのは、(5)の拡張的な財政政策である。特に、それが必要な理由の1つとして、自民党が消費税引き上げを挙げている点が興味深い。
と言うのは、消費税引き上げは、税率引き上げ前の駆け込み需要を生じさせ、来年の内需を押し上げることが想定される。しかも、消費税率引き上げを確実なものとするため、日本政府と財務省は補正予算などにより来年の景気を財政支出で下支えする方針である。実際の消費税引き上げの条件として、名目で3%、実質で2%という景気条項が付与されているからだ。その結果、外需の落ち込みを内需でカバーすることになり、輸入増加など日本の国際収支には一段の悪化圧力が加わり、来年の円相場を今年以上に円安に推移させる要因になる。
ところが、上げ潮派の代表格である安倍総裁は従来、消費税引き上げに否定的であった。消費税引き上げが反故になれば、来年駆け込み需要も財政支出も期待できず、国際収支悪化を背景とする円安は不発に終わるところだった。
だが、今回の中間報告を見るかぎり、今月発足するであろう安倍政権も消費増税を前提に経済政策運営を行うことが確実となった。それどころか、政権公約で自民党は「今後2~3 年はより弾力的な経済財政運営を推進する」と明記。10 年間で200 兆円の公共投資を行う国土強靭化基本法の制定にあらためて取り組むことも示唆した。
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