落札企業ゼロが続出 市場化テストの異常

法務局で起きた前代未聞の事態とは

1日に二十数回の入札も

「来年4月以降も仕事を続けられるのか不安。落札した企業に再び雇ってもらえたとしても、労働条件がさらに悪くなる可能性が高い。現在、8時間のフルタイム勤務なのに1カ月の手取りは15万円程度でボーナスもない。これ以上賃金が下がると生活に支障が出かねない」

関東地方の法務局で働く50代の女性は危機感を高めている。今夏のトラブルでは法務省と随意契約を結んだ企業に移籍できたが、同業務を別企業が落札した際、その企業に雇用される保証はない。

加えて、今回の入札で設定された予定価格は、業務を放棄した2社が請け負っていた金額と同水準かそれ以下とみられる。その一方で法務省は応札する企業に今までより手厚い人員配置を求めており、法務局が定めた予定価格以下で落札できたとしても、職員1人当たりの賃金を切り下げざるをえなくなる。

今回の入札では、何が何でも落札企業を決定したいという焦りから、業者が決まるまで同じ日に入札を延々と繰り返すケースもあった。10月下旬に実施された関東地方のある法務局の入札では、同じ日に二十数回もの入札が続けられた。

公共工事などで数多くの競争入札を手掛ける国土交通省では、予定価格の範囲内の価格を提示した企業が存在しなかった場合、別の日に再度の入札を行うルールになっている。その場合でも、再度の入札は1回を限度とすることが内規で定められている。同省の職員は「会計法で定めはないものの、同じ日に何十回も入札を繰り返すというやり方は低価格の強要ともいえる」と指摘する。

小泉政権時に鳴り物入りで導入された市場化テストが、当初の説明とは異なり、公共サービスの質の低下と労働条件の際限のない切り下げを招いていることは確かだ。法務省は、その反省の上に立つことなく、延々と失態を繰り返している。

(撮影:風間仁一郎)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

(週刊東洋経済2012年12月1日号)

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