復活「すき家」、業績急改善が止まらないワケ ゼンショー、絵に描いたようなV字回復を達成

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また、深夜営業を休止していた期間は、一定の時間で店舗を開店・閉店することによる食材廃棄ロスが大きくなった。深夜営業の再開に伴い、ロスは改善傾向にある。2015年4月に牛丼価格を291円から350円に値上げ(牛肉、玉ねぎを20%増量)した効果と合わせて、原価が20億円改善したという。

リーマンショック以降不振が続いていた米国でのココス事業から2015年3月末で撤退したことも奏功した。これは2016年3月期に約200億円の減収要因となったものの、約40億円の利益押し上げ効果があった。

 

海外「すき家」、国内「はま寿司」で成長持続

2017年3月期は、売上高5588億円(前期比6.3%増)、営業利益177億円(同46.2%増)、当期純利益70億円(同74.6%増)と、会社側は続伸を予想している。純利益は過去最高だった2007年3月期の61億円を上回る見通しだ。配当は5円増配の16円を見込む。

主力のすき家は、牛丼と汁物、おしんこなどのセットメニュー割引や期間限定商品投入などにより客数を増やし、既存店売上高102.4%(前期実績101.1%、営業休止や改装中の店舗を除く実績)を計画する。原価については、牛肉価格の下落により、30億円(グループのなか卯を含む)の改善を見込む。

深夜営業休止中の232店については、深夜営業を再開できる体制を整えることを優先し、再開を急がない方針だ。「既に約9割の店舗で深夜営業を再開していることから、残る店舗の深夜営業再開のインパクトは非常に小さい」(丹羽清彦・グループ財経本部長)。

新たな成長のドライバーは「はま寿司」だ

今期の新規出店予定数は231店。うち、国内のすき家の出店は10出店にとどまる。既に約2000店を有するすき家の出店余地は多くない。今後の成長のドライバーとなりそうなのが、海外のすき家事業と、回転ずしチェーン「はま寿司」だ。

海外のすき家店舗は2016年3月末現在で174店。うち134店が中国で、既存店売上高は120%を記録した。今期も中国を中心に海外すき家を126店出す計画だ。国内出店予定数105を上回り、初めて海外出店数が過半を占める。

国内では回転ずしチェーン「はま寿司」の出店が加速している。はま寿司は平日1皿90円、土日祝日100円の低価格と、ラーメンなどサイドメニューの充実を武器に支持を集めている。ゼンショーHDが持つ食材加工・配送網や物件情報が出店の後押しになっている。前期は59店を出店し、2016年4月末現在の店舗数は436店と、「スシロー」の430店(2016年5月現在)を抜き、店舗数では業界1位となった。今期も50店の出店を予定する。

本決算と同時に発表した、2019年3月期までの中期経営計画では3年間で550店舗以上の出店を掲げ、大半が海外すき家とはま寿司になる計画だ。
中計はオーガニックグロースを前提とした数字だが、同社は「なか卯」、「華屋与兵衛」の取得など、M&Aにより業容を拡大してきた会社でもある。5月17日には機動的な資本政策を可能にするため、20億円、160万株を上限に自己株取得することを発表した。M&Aは引き続き積極的に検討していく考えだ。
 

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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