一流のクリエイターは、皆「勘違い」の達人だ

ヒットを生み続けるために必要な「恥知らず」

しかし、イチローが面白いのはそうした勘違いしているときにこそヒットを量産しているということだ。そして、それが勘違いだと気づいてフォームを修正しているときには、短いながらも不調に陥る。イチローの野球人生は、そういうふうに何度か軌道修正を余儀なくされてきた。

このように、「理解」あるいは「分かる」というのは、ある種の勘違いであると、たとえイチローほどではなくとも、何かの道にちょっとでも習熟した人なら分かる。それはつかの間の夢のようなものだ。

ただイチローは、その後も再びバッティングのことが分かった気になっている。それを何度もくり返している。

なぜかといえば、彼はそれがつかの間の夢だとは分かりつつも、同時にそれを信じることができているからだ。分かったつもりが幻であると知った上で、なお分かったつもりになれているのである。

理解したと素直に思い込めるほどの厚顔さが必須

その意味で、イチローは非常に厚かましい人間である。恥知らずといっていい。そういう厚かましい人間だからこそ、ヒットを年間263本も打ったり、日米通算で4000本も打ったりすることができるのである。

つまり、クリエイターとして継続的に活動している人というのは、何かのことが分かった気になるのはある種の勘違いであると知りながら、その上でそういう気になっている。そこまで恥知らずなのだ。

逆に、一度はクリエイターになったもののそれを継続できない人というのは、この種の恥知らずさがない。それが勘違いだと分かったとき、二度とそういう気持ちを抱くことができない。

小説家でいえば、ニートのことも異世界のことも、人は本質的に理解できないと知りながら、なおそれを理解したと素直に思い込めるほどの厚顔さがなければ、書き続けられはしない。そういうふうに、勘違いすること、あるいは厚顔であることが、クリエイターになるためには、あるいはクリエイターでいつづけるためには、欠かせない条件となっているのである。

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