一流のクリエイターは、皆「勘違い」の達人だ ヒットを生み続けるために必要な「恥知らず」

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しかし、イチローが面白いのはそうした勘違いしているときにこそヒットを量産しているということだ。そして、それが勘違いだと気づいてフォームを修正しているときには、短いながらも不調に陥る。イチローの野球人生は、そういうふうに何度か軌道修正を余儀なくされてきた。

このように、「理解」あるいは「分かる」というのは、ある種の勘違いであると、たとえイチローほどではなくとも、何かの道にちょっとでも習熟した人なら分かる。それはつかの間の夢のようなものだ。

ただイチローは、その後も再びバッティングのことが分かった気になっている。それを何度もくり返している。

なぜかといえば、彼はそれがつかの間の夢だとは分かりつつも、同時にそれを信じることができているからだ。分かったつもりが幻であると知った上で、なお分かったつもりになれているのである。

理解したと素直に思い込めるほどの厚顔さが必須

その意味で、イチローは非常に厚かましい人間である。恥知らずといっていい。そういう厚かましい人間だからこそ、ヒットを年間263本も打ったり、日米通算で4000本も打ったりすることができるのである。

つまり、クリエイターとして継続的に活動している人というのは、何かのことが分かった気になるのはある種の勘違いであると知りながら、その上でそういう気になっている。そこまで恥知らずなのだ。

逆に、一度はクリエイターになったもののそれを継続できない人というのは、この種の恥知らずさがない。それが勘違いだと分かったとき、二度とそういう気持ちを抱くことができない。

小説家でいえば、ニートのことも異世界のことも、人は本質的に理解できないと知りながら、なおそれを理解したと素直に思い込めるほどの厚顔さがなければ、書き続けられはしない。そういうふうに、勘違いすること、あるいは厚顔であることが、クリエイターになるためには、あるいはクリエイターでいつづけるためには、欠かせない条件となっているのである。

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岩崎 夏海 作家

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いわさき なつみ / Natsumi Iwasaki

1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著『部屋を活かせば人生が変わる』(累計3万部)などがある。

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