オバマを再選へ導いた、米国リベラルの行方 急進保守に反発し”オバマ連合”が再結集
このことで傲慢になった共和党は、「保守派の政策を前面に出し、12年の大統領選挙とそれ以降の政策課題の中心に据えた」とハーバード大学のシーダ・スコックポル教授は著書『オバマとアメリカ政治の将来』の中で分析する。
この共和党の急激な“右傾化”がオバマ連合に再び力を与えた。
最初に反応したのがヒスパニック系有権者だ。不法移民の強制送還などを主張する共和党の政策は、彼らを震撼させた。1100万人と言われる不法移民の多くはヒスパニック系だ。それが共和党への反発となって表われ、他のマイノリティも同調した。
今回の選挙で明らかになったのは、ヒスパニック系有権者が選挙で大きな影響力を持つということだった。ヒスパニック系有権者の数は増加し続けており、すでに全有権者の1割を占めるまでになっている。今後も増加は続き、最大勢力になるとの予想もある。特に選挙結果に重大な影響を及ぼす激戦区にはヒスパニック系住民が多く、彼らが当落のカギを握ることになる。
共和党は、女性問題でも極めて保守的な政策を展開してきた。たとえば、産児制限運動で重要な役割を果たしてきた家族計画連盟への政府補助金の打ち切りを決めたり、各州で中絶の禁止を求めた。共和党議員が「レイプも神の思し召し。中絶を認めるべきでない」という無神経な発言を繰り返したことも、女性有権者の反発を買った。
前回の大統領選挙でオバマ候補を熱狂的に支持した19歳から29歳のミレニアム世代は、4年間のオバマ政権の経済政策に失望していた。そのミレニアム世代も富裕層を優遇する共和党の政策には反発した。
オバマ連合は、右傾化する共和党への反発から、リベラル派がオバマ大統領の下に結集したものだ。それは一過性のものではなく、民主党の新しい支持基盤の誕生の可能性も示唆している。
1981年に誕生したレーガン政権の「保守革命」で、米国の保守化は急速に進んできた。それから30年以上、“レーガンの保守”が米国の政治の基調を作り上げてきた。
だが今回の選挙では、全米のあちこちでこれまで予想できなかったリベラル派の動きが出てきた。
たとえば、上院では初めて同性愛者の議員が誕生した。住民投票では、コロラド州とワシントン州で嗜好品としてのマリファナの合法化が決まり、オレゴン州など4州で同性婚が合法化された。メリーランド州では不法移民の子どもへの奨学金の貸与が決まり、カリフォルニア州では教育予算を確保するために富裕層への増税が支持された。
こうした動きを受け、保守派コラムニストのロス・ドウハット氏は「レーガンの時代は正式に終わった。オバマの多数派が現在の米国の唯一の多数派となった」(「ニューヨーク・タイムズ」11月7日付)と、米国社会の変化を指摘する。
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