切り捨てられた鳩山元首相 「第2期民主党」づくりの渦中で

✎ 1〜 ✎ 115 ✎ 116 ✎ 117 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

撮影:尾形文繁

「鳩山元首相、総選挙不出馬」と1121日の朝刊各紙が報じている。そのとおりなら政界引退となる。

「民主党政権の終焉」を前にして、「民主党の創業者」が自身の政治的役割の終焉を認識して身を退くのかと思ったら、そうではなく、TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加の是非を踏み絵にする野田首相の方針で党の公認が得られなくなり、不出馬に追い込まれたのだという。ただし、鳩山氏は2010年の首相辞任時に「次期総選挙不出馬」を明言して後に撤回した過去があるので、最終的に引退となるかどうかはわからない。 

鳩山氏は「政界一のリッチマン」「宇宙人」と呼ばれた。

私財を武器に、民主党を創立して自民党と並ぶ2大政党に仕立て上げ、党首として史上初の本格的政権交代を実現した。その功績は大きい。

最大の失敗は、首相在任中、政権担当能力の欠如から、民主党政権の混迷と低落を招いたことだ。それだけでなく、政権交代を目指した野党時代、幹事長や代表として、「非自民政治」の旗だけで、マニフェストの実現可能性も吟味せず、政権獲得史上主義で突っ走った点も、いまとなっては「鳩山氏の罪」に数えられるだろう。 

 その自覚があるのか、大敗覚悟で解散に踏み切った野田首相は、「ごった煮・民主党」からの脱皮を狙っているように映る。消費税増税に続き、TPP交渉参加に舵を切った。右寄り路線を鮮明にする安倍自民党に対抗して持論の「中庸」を唱える。「ニュー民主党」を打ち出すのに懸命だ。包括政党の道を棄て、純化路線へ転換を図り始めた。「ごった煮」容認だった鳩山、菅、小沢の3氏の「トロイカ時代」との決別を決断したのだろう。 

 野田首相は10年くらい前から始めた「第2期民主党をつくる会」をいまも続けているが、「脱トロイカ」の「第2期民主党」づくりのために鳩山氏も追放されたと見ていい。総選挙で第2党に転落しても、「ニュー民主党」で将来の再浮上と政権再奪取が可能、と首相は考えているのかもしれない。

有権者は野田民主党の選択にどんな審判を下すのか。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事