「クッキー」は死んだ?生き残るのは何なのか Facebookがアドテクに抱く野望
しかし、ジャクバウスキー氏はこの141億ドルへの成長にはモバイルエクスペリエンス(モバイル体験)の改善が重要だと指摘した。「アドテク業界に長く身を置く私にとって、モバイル体験には恥ずかしい部分がある」という。
モバイル広告にはさまざまなフォーマットがあり、なかには極めてモバイル体験を毀損するものがある。昨年は消費者の不満がアドブロック使用で顕在化した。このモバイル体験は現状のプラットフォームがもっとも熾烈な競争を繰り広げる地点であり、デジタル広告のライバルグーグルともさまざまサービスで競い合っている(詳しくはこちらの記事)。
フェイスブックの広告収益の約8割はモバイル広告によるものであり、モバイル広告の改善が収益に直結する。特に最近はインスタグラムを含めて動画やイマーシブ(没入型)の広告商品を投入している。フェイスブックは広告主に対し、テレビからモバイルなど各デバイスをまたがる「クロスデバイスマーケティング」のモバイル面の担い手としての立場をアピールしている(詳しくはこちらの記事)。
ジャクバウスキー氏は「テレビとのテレビ広告予算を獲得するためにも、モバイルエクスペリエンスを良くしていかなくてはいけない」と語った。元WPPのセコールド氏もテレビ同様のリッチな体験までモバイル広告を高めることを目指している。「テレビ広告は依然としてリッチな体験を提供している。それを小さな画面で達成しないといけない」と話した。
フェイスブックは先月、TRP(個人視聴率)によりフェイスブック広告を購入できる仕組みを導入した。広告主に対して、米国のテレビ視聴測定の主流であるニールセンの指標を基に、フェイスブック広告を掲載できるようにし、テレビとデジタルの指標の分断をクリアできるようにしている。
まだまだ高いグーグルの壁
フェイスブックは2013年にマイクロソフトからアトラスを買収。先述したクロスデバイストラッキングと、10億人を超えるユーザーベースのパーソナルデータを活かし、またサードパーティデータとの連携により、大手広告主の要請に応えようとしている。特に、消費財メーカーがデジタル広告接触がオフラインのリアル店舗での購買に寄与するか「証拠」を求めていたことには、オラクル傘下のデータロジックスとの提携で対応している。
しかし、グーグルの壁はまだ厚いようだ。アトラスのピープルベースドの広告配信は実のところ、到達が完全ではなく、フリクエンシー(広告の接触頻度)に揺れがあり、性別の誤りもみられると言われる。オラクルのブルーカイ、アドビのオーディエンスマネージャーなどの一部のDMPとの連携が難しい部分もあるようだ。米国のアドサーバーのマーケットシェアでは、動画を除いた場合、ダブルクリックは「独占」とも呼ぶべきシェアに達していると言われる(参照:adexchanger)。
また、アトラスは2016年前半にDSP(デマンドサイドプラットフォーム)をローンチする予定だったが、3月に撤退を認めている。ダブルクリックと似た構造を目指すならば、アトラスには入札機能が必要なはずだ。
(文:吉田拓史)
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