「爆買いバブル」が2017年までに崩壊する理由 なぜ中国人旅行者はあんなに買っているのか

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現に、日本で販売されている資生堂高級ラインの「クレ・ド・ポーボーテ」や「SHISEIDO」は今も高い人気を誇り、東京・銀座7丁目の「THE GINZA」では、高級化粧品を爆買いする中国人を度々目にします。つまり、豊かになった中国人が欲しいのは、中国製の資生堂ブランドではなく日本製の資生堂ブランドであり、日本人向けに日本で販売されている資生堂の化粧品なのです。

爆買いする客層の2つ目は、国内で転売するために日本で大量買い付けを行う、仲買を生業とした中国人旅行者です。彼らは、インターネット上で「C to C」で購入代行をするショップを展開しています。たとえば、中国でいちばん人気のサイト「淘宝 Taobao(タオバオ)」には多くの代行ショップがあり、欲しい商品を受け付けています。

転売のための爆買いで来日する層はショッピングの目的が明確なので、途中で寄り道もしなければ、自分のための買い物もほとんどせず節約をします。

富士山の麓にあるインバウンド専門のホテルでの例をお話しましょう。このホテルでは格安団体ツアーで来日する中国人旅行者をターゲットとしており、稼働率は年間平均9割を超えているそうです。オーナーは当初ホテル内で物販しようと考えており、ホテル内には飲料の自動販売機も設置し、値段を通常より20円高く設定しました。

ところが実際は、客は少し離れた近所のコンビニまでわざわざ飲み物を買いに行き、ホテル内では物販品もほとんど売れなかったのです。のちに自動販売機の飲料をコンビニより10円安く設定したところ、非常に良く売れるようになったそうです。格安団体ツアーでやってくる仲買の中国人旅行者は、買うものを定めて日本に来ていて無駄遣いを嫌う、ひとつの例です。

中国でECが飛躍的に普及している

なぜ、爆買いバブルは2017年までに崩壊するのか。それは、前述した中国人旅行者が爆買いをする目的を見れば、それは明らかです。中国国内にいながら、高いクオリティの品物が入手できるようになれば、爆買いの必要がなくなるのです。

ここで着目すべきは、中国国内のEC、つまり「インターネットを利用したショッピング」の普及です。中国人のインターネット人口は、2015年12月時点で6.88億人。このうち、スマホ利用者は6.2億人にのぼります(2016年1月25日付新京報の記事より。中国インターネット情報センター(CNNIC)調査による「第37回中国インターネット発展状況統計報告」)。

これまでインターネット網が社会へ普及するにあたっては、順を追って拡大していく図式がありました。たとえば日本においては、パソコン→携帯電話→スマホという流れです。しかし、従来の常識を打ち破り、爆発的な展開を見せているのが中国です。中国国内では無線情報インフラが猛スピードで整備され、スマホベースのインターネット環境が充実し始めました。これによって北京や上海といった大都市圏だけでなく、沿海部はもちろん内陸部のかなりの都市において、スマホの利用率が急上昇したのです。

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