「大氷河期」迎えた海運・造船 膨大な新船、運賃は暴落
大暴落もたらした船腹の供給過剰
そもそもなぜ海運市況は悲惨な状況になったのか。「船腹の供給過剰が重しとなっている」。10月31日、冴えない上期業績を発表した大手3社の役員は一様に漏らした。海運の荷動き自体が減っているわけではない。すべての原因は“需要”ではなく“供給”にある。つまり、短期間にあまりにも船が増えすぎたのだ。
中国爆食で2003年ごろから船が足りなくなり、ケープの運賃が暴騰。1日船を動かすだけで10万ドル儲かる。07年にはそんな事態が当たり前と見なされるようになった。「船がありさえすれば必ず儲かる。そして船が大きいほど儲けも大きい」と海運各社は競ってケープを発注した。当然、船価もハネ上がった。
その大量発注した船が今、山のように竣工を迎えている。荷主の輸送需要をはるかに上回る新船の供給で、海運業は未曾有の船腹過剰に陥り、運賃相場が崩落したのだ。
現在の海運各社は八方ふさがりに陥っている。次から次に出来上がってくる船は高船価なので、今売れば損が出る。相場低迷が続き、運航しても高い船価に見合った収入が得られない。ペナルティの額が大きいうえ、造船所とのしがらみ、荷主や船主との契約があるためにキャンセルもままならない。
解撤・売船を急ぐが本格回復に疑問の声も
海運各社は、ケープの新規発注を凍結するにとどまらず、船隊縮小に動きだした。
期初112隻のケープを運航していた日本郵船は、4~9月に4隻を解撤処分。従来は船員待機状態で行っていた停船(ホット・レイ・アップ)を、船員を下船させる本格的な停船(コールド・レイ・アップ)に切り替えた。単純に売船すると海外で再利用されるなどして供給過剰の解消にならないから、できるだけ解撤処分をしている。
同107隻運航の商船三井は従来、船齢23歳以上の老朽船に適用していた解撤の対象を今期から15歳以上へと大きく前倒しした。11月までに5隻実施、年度内に1~2隻追加で解撤する。フィリピン沖で4隻実施中のコールド・レイ・アップは、最終的には10隻程度に拡大する。