日本はさらなる金融緩和の余地、中国経済の先行きは「楽観」
--IMFアヌープ・シン アジア太平洋局長--

国際通貨基金(IMF)のアジア太平洋局長であるアヌープ・シン氏は12日、都内で会見を行いアジアの成長が減速しているものの、「世界全体の成長率よりもアジアは2%ポイント上回っており成長のリーダーだ。下振れリスクはあるが政策対応の余地もある」と話した。
 
 アジア地域の12年前半の成長率は年率5.5%。4月に公表した12年の成長率見通しは6%だったが今回の見直しで5.4%に引き下げた(11年実績は5.9%)。13年については約6%と持ち直しを見込んでいる。また、欧州債務問題で欧州系金融機関がアジア向け融資を絞っている傾向が見られるものの、「アジアでのデレバレッジ(融資の引き上げ)は管理できる水準で、金融市場も安定している」と述べた。
 
 中国の成長減速について、「ハードランディングはないだろう」と述べ、足元で輸出減少の影響を受けているものの、「中国の内需は強いままで、減速感はない」(シン局長)。そのため、12年は7.8%、13年には8%台の成長率に回復する予想を立てている(12年、13年度とも4月時点の見通しからはいずれも下方修正した)。
 
 デフレ脱却に向けて日本銀行が実施している金融政策に対しては、「消費者物価1%を目標に、あらゆる手を尽くして達成しようとしている。ただ、(金融緩和は)もっとやれる余地があると見ている」と述べた。6月にIMFの筆頭副専務理事であるデビット・リプトン氏が日本で会見した際も「日本はより金融緩和を行うべき」と注文を付けていた。IMFは日本が一段の金融緩和を行う余地があるとのスタンスを繰り返し強調している。
 
 ただ、今回の会見でアジア太平洋局次長のジェラルド・シフ氏が「持続的なデフレからの脱却には金融緩和が重要だが、成長の実現も必要」と話したように、金融緩和が長期化する中、そうした環境を利用して企業が借入を増やして投資が活発化する状況に発展しないのが最大の課題。30日に日本銀行は金融政策決定会合を開き、経済・物価情勢の展望(展望レポート)で新たに2014年度の成長率と物価見通しを示す。実体経済への効果がなかなか見えない中、どのような政策を打ち出すのか。次回会合の注目度は高い。

(井下健悟=東洋経済オンライン)

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