「大氷河期」迎えた海運・造船 膨大な新船、運賃は暴落

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疑義注記をつけるなど、自己資本の分厚い古巣の商船三井ではまずありえないことだった。大手出身の薬師寺社長にとって不本意であるばかりか、株式を上場している海運会社で疑義注記がつくのは一汽1社のみという不名誉なことでもあった。

その頃のケープ運賃相場は6月に3000ドル台に突入。7月頭にいったん7000ドル台に戻っていたものの、同月中旬にはあっというまに下げに転じた。

「足元のどん底相場が続けばずっと営業赤字ですね。だから継続企業の前提に疑いが残るでしょう?」。公認会計士にそう詰め寄られると、(この相場悪が未来永劫続くわけはないだろ)と憤りつつも、薬師寺社長には返す言葉がなかった。7月下旬には業績を下方修正するとともに疑義注記をつけた。

海運相場の低迷はその後もとどまることを知らず、ケープ運賃は8月についに2000ドル台にまで崩落。9月に上向いたものの力強さに欠け、結局、この上期は一度も1万ドル台を回復することなく終わった。

相場低迷でさすがに上期30億円程度の営業赤字を覚悟しなければならないが、償却をほぼ終えた老朽船売却で40億円の特別利益を計上し最終黒字を確保する──。この期初に立てたもくろみはもろくも崩れ、上期は88億円の営業赤字、125億円の最終赤字となった。通期では190億円の最終赤字へと、今期早くも2度目の下方修正を余儀なくされた。

大半の船を相場に委ねて行き詰まった三光汽船ほどではないにしろ、一汽は短期のスポット契約が大手に比べて多い。

スポット契約の運賃は、需給を反映した足元の相場で決まる。スポット契約の船は、相場が活況ならばキャッシュを生み出す「宝船」となる。だが、相場が採算線を割り込むと途端にカネ食い虫と化す。

長期契約による運賃固定化に加えて、コンテナ船、自動車船などさまざまな船を運航しリスク分散している大手と違い、バラ積み船のスポット契約の多い三光汽船や一汽の業績は運賃相場に左右されやすい。

10月に入ると、薬師寺社長は古巣の商船三井に資金面の協力を要請。150億円の融資枠設定にこぎ着けた。当面の資金繰りにメドをつけ、年度末に向けて新たな再建策を策定中である。

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