JR東日本「伊豆クレイル」が持つ4つの潜在力 首都圏に近い新たな観光列車はアイデア満載

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そして第三は、首都圏発着の観光列車が登場する可能性だ。伊豆クレイルは小田原発着で東京や横浜には乗り入れないが、スーパービュー踊り子号のように伊豆クレイルが東京駅から出発したら便利に違いないし、さぞかし人気が出ることだろう。

伊豆クレイルが東京駅に乗り入れる可能性についてJR東日本の担当者に聞いてみたところ、「現時点で計画はない。でも新幹線と連携すれば便利ですよ」という答えが返ってきた。

JR東海は東京・品川―小田原間の新幹線普通車自由席を利用できる「新幹線お出かけきっぷ」を発売している。料金は往復で4630円。通常なら6440円かかるので1810円お得だ。大人2名以上での利用などいくつかの制限はあるが、伊豆クレイルに乗るためのきっぷとしては、確かに便利だ。

地方鉄道とのコラボ企画も

伊豆クレイルの出発時間は11時40分頃の予定だ。東京発10時56分の新幹線「こだま」号に乗れば、小田原には11時31分に到着する。伊豆クレイルの運行スケジュールは新幹線との連携を考慮しているように見える。

一方で帰りは伊豆クレイルの小田原到着が17時12分頃。新幹線こだまの小田原発は17時11分なのでギリギリ間に合わない。伊豆クレイルは一つ手前の熱海には16時55分に到着する。こだまが熱海を発車するのは16時58分なので乗り換えできる可能性はあるがかなり慌ただしい。約30分後に次のこだまが来るのでそちらを利用した方がいいかもしれないが、帰りの運行ダイヤの連携には工夫の余地がある。

もし、伊豆観光でJR東日本とJR東海の連携がさらに踏み込んだとしたら、将来、多方面でもさまざまな連携の可能性が見えてきそうだ。

他社との連携という視点で見ると、伊豆クレイルは、伊東―伊豆急下田間は伊豆急行線を走る。伊豆急行は鉄道を使った沿線観光に熱心で、テレビ番組の「ぶらり旅」さながら、レトロ電車に乗って途中下車しつつ、沿線の観光名所を歩き回るという日帰りツアーもしばしば実施している。伊豆クレイルを使ったJR東日本と伊豆急行によるコラボレーション企画の可能性もありそうだ。

JR東日本は各地で私鉄や第三セクターと直通運転を行なっている。その意味では観光列車を活用した他社とのさらなる連携も第4の可能性として考えられるかもしれない。

このように伊豆クレイルは将来の観光列車を変えるさまざまな可能性を秘めている。これからの観光列車は派手さを競うのではなく、アイデアが問われる時代に入ったといえる。

(撮影:尾形文繁)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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